巨人・原監督 神様超え球団歴代最多1067勝「信じられない気持ちでいっぱい」

[ 2020年9月12日 05:30 ]

セ・リーグ   巨人2―1ヤクルト ( 2020年9月11日    東京D )

<巨・ヤ>ファンに手を振る原監督(撮影・森沢裕)
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 巨人は11日、ヤクルトに2―1で勝ち、原辰徳監督(62)がV9を成し遂げた川上哲治氏(故人、享年93)を上回り、球団歴代単独1位となる監督通算1067勝に到達した。1―1で迎えた8回1死、坂本勇人内野手(31)が右越えに決勝の15号ソロを放った。リーグ連覇への独走を加速させながら、新たな球団史を刻んでいく。 

 私の夢には続きがあります――。引退試合での言葉だ。創設85年を迎えた巨人で監督は歴代12人。原監督が「神様」を超えた。

 「信じられない気持ちでいっぱい。燦然(さんぜん)と輝く神様、川上監督を一つ超えられた。心の中の宝物にして精進、挑戦していきたい」。感極まったがこらえた。まだ夢の続きを走るからだ。

 80年ドラフト。代表4人にくじを引かれる瞬間「もしかしたら他球団で野球をやるかなと3秒思った」。当時の藤田元司監督の右手が上がる。「ジャイアンツしか知らない幸せな野球人」と感謝するプロ生活が始まった。

 43歳で監督となり、その藤田氏から生前「役職が人を育てる」と学んだ。年功序列を嫌う恩師が、企業向け講演会でも諭した組織論。原監督の第3次政権はコーチの育成も使命とした。背番号を持つ1軍コーチ9人で年齢が5番目の元木ヘッドコーチを指名。「2軍から上げたらすぐ使え」も藤田氏の教えだ。

 開幕の見通しが立たないコロナ禍の3月は自身も不安を抱える日々。選手は逆算ができず難しい調整を強いられた。道しるべを示してくれたのは、西鉄・大洋も日本一にした三原脩元監督だった。座右の銘「日々新(あらた)なり」。人生訓やプロの在り方を書いた自筆ノートを読ませてもらった記憶をたどり、円陣で「まずは一日、今日のベストを尽くそう」と訴えかけた。

 伝統を継承しながらも、時流に沿った指揮を執るから強い。過密日程の今季は、1軍メンバーで構成するグループLINEを駆使してスタメンの予定を前日に通知。ベテランが「寝る前から、スタメンじゃないからこういう練習しようと」(原監督)、前夜から体調管理に時間を使える。加えて、若手には心身の準備を徹底させ「緊張感が選手を育てる」と細かな狙いがある。

 川上氏と共通する「勝利、実力至上主義」を貫き、同氏の1066勝を超えた。5回は一塁走者だった野手最年長38歳の中島にエンドランのサインでスタートさせ、同点の1点をもぎ取った。同年齢の3番・亀井に送りバントのサインも出した。神様の座右の銘「和」を示し、記者会見でも「巨人軍。個人軍ではない」と語った。

 「巨人軍の長い歴史の中で歴代1位になったというのは大変ありがたく、感謝申し上げる。ただ一年一年の勝負の中で戦い半ば。浸る余裕は全くありません」。62歳にして迷う哲学もある。10―0の勝利と6―4の勝利、一体どちらが組織を強くするのか――。答えは出ないでいるという。

 だから、歴史の頂点に立った直後も自身を「未熟者。真っ白い状態。新鮮な気持ち。横一線」と形容したのだろう。(神田 佑)

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