理想と現実の狭間で――「いままでになかった」広島小園は、2軍での不振にいま何を思う

[ 2020年8月24日 09:00 ]

広島の小園(撮影・奥 調)
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 不振をスランプと捉えるか、実力と受け止めるか。広島・小園海斗内野手(20)は、現状を潔く認めて精進する。

 高卒1年目だった昨季、一時打率3割を超えても、2割台前半にまで落ち込んでも、「調子とかを語れるレベルではないですよ」と一貫していたことを思い出す。今季は、ウエスタン・リーグ34試合で打率・190(24日時点)。「ここまで打てないのは、いままでになかったですね。なんでかな…という思いもありますけど、そんなにうまくいく問題ではない」。人生初と言う長期間の低迷もまた、力不足が招いた結果と受け入れている。

 水本2軍監督は言う。「去年の1、2軍での打率と今年の打率は同じぐらい。だったら、それが実力だということ」。昨季1軍で打率・213、2軍で同・210だった。高卒1年目で遊撃に定着した潜在能力は疑いようがないとはいえ、優先的に1軍から声がかかるほどの実績はない。ならば、2軍で結果を残す以外に道はない。

 焦りは打撃内容に表れる。「1軍のこととかが頭にちらつくと、結果を求めて力んだり、体が開いたり…。打席の中でリラックスできないことにつながっていました」。さらに、同学年のドラフト7位で同じ内野手の羽月が1軍に定着。アマチュア時代から同世代の先頭を走ってきただけに、これまでにはなかった感情と向き合う日々が続く。

 「やっぱり悔しいですね。自分も同じチームメートとして1軍で一緒にやりたい。この気持ちをいい方向に持っていきたい」

 今季初昇格した中村奨、羽月、大盛は、いずれも2軍打率3割以上を残していた。「打てないと上がれないのは当たり前。難しいですけど、継続して結果を残せば、状態を見ていただけるはず。結果を残すしかない」。奇しくもライバルが示したように、打てれば1軍に上がれるのだ。

 昨年6月、緒方前監督は、交流戦最下位と下降線に入ったチームに「新しい風を吹かせたい」と、2軍戦打率・189だった小園を緊急昇格させた。最下位に苦しむ現状に、初々しく駆け回っていたあの姿が恋しくなる。理想と現実の狭間で、小園もその周囲も思い悩む。(記者コラム・河合 洋介)

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2020年8月24日のニュース