新井貴浩氏 積極野球で生まれた西勇のビックリ弾!当然の継投、打った吉川尚が上手

[ 2020年6月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2―3巨人 ( 2020年6月19日    東京D )

<巨・神>3回、菅野(左)から先制ソロを放つ西勇(撮影・木村 揚輔)
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 【新井貴浩 視点】スポニ本紙評論家の新井貴浩氏(43)はセオリー外で飛び出した阪神・西勇輝投手(29)の先制弾に“矢野イズム”を強く感じ取った。

 吉川尚の本塁打は相手が上だったと思うしかない。内角に意識はあっても、狙ってはいなかったと思う。狙っていたら、一塁側へのファウルになる球だ。それくらい厳しいコースだった。いい反応で、腕をたたんで体を回転させた。阪神バッテリーにすれば、意図した球を意図した通りに投げられた。それを打たれたのだから仕方ない。落ち込むことはない。切り替えればいい。

 継投のタイミングも当然だと思った。開幕戦は独特の緊張感があって疲労は倍と言っていい。特に今年は特別な開幕だ。西勇輝は7回2死で打席に立つ準備をしていなかったし、しっかりコミュニケーションを取った上での交代だった。

 阪神からすれば、いい材料はたくさんあった。西の本塁打にはビックリした。菅野は直球に力があったし、変化球も切れていた。コントロールも抜群で、追い込まれたら難しい。打つには積極的にいくしかないと見ていた。それでも2死無走者で、投手の初球打ちはセオリーにない。巨人バッテリーも「打ってこない」と思っていたはず。投手だし、菅野にすれば、少し力を抜いた直球だった。

 ベンチから「打っていけ」と指示があったかもしれない。明確な指示がなかったにしても、初球から打ちにいけるムードが阪神ベンチにはあるのだろう。矢野監督が普段から掲げてきた「超積極野球」があったから生まれた先制弾だった。

 マルテの状態の良さも目を引いた。初回はフルカウントから外角いっぱいのスライダーで見逃し三振。ボールと見切った球をストライクに取られた。ただし、昨季なら空振りした球かもしれない。4回の2打席目の初球は同じ外角スライダー。前の打席で見極めたと思った球をストライクに取られたので、打者心理としては振りたくなるところ。冷静に見逃し、2球目の内角ツーシームを打ち返した。球が見えているし、来日2年目で日本の配球に対する経験値を感じさせる打撃だった。

 注目のボーアは速球への対応が鍵になりそうだ。菅野の150キロ超に対して全体的に振り遅れの印象があった。逆に追い込まれてからの変化球には大きく崩されていない。対応力はありそうだ。
 無観客での開幕。観ている側からすれば、普段通り、いや、普段以上に手に汗を握って見入った。やはり、野球に飢えていたのだと思う。まずはスタートを切れたことを喜びたい。過密日程で選手たちは大変だけど、素晴らしい奮闘を、これからも見せてほしい。

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