【内田雅也の追球】「初恋の味」へのアイデア――阪神、連敗脱出への妙案

[ 2019年7月20日 08:45 ]

甲子園球場の正面ゲート。19日「カルピス100周年記念ナイター」だった。
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 甲子園球場6号門(関係者出入り口)を入った辺りは俗に「委員通路」と呼ばれている。委員とは大会関係者のことだ。甲子園球場は1924(大正13)年、人気沸騰の中等野球(今の高校野球)用に造られた。まだ今のプロ野球はなかった。

 夕刻、その委員通路で同僚と「これは中止だなあ」と話していると、刺すような視線を感じた。いかにも残念そうな表情。あれはカルピスの関係者だったのではないだろうか。

 19日の阪神―ヤクルト戦は「カルピス100周年記念ナイター」と銘打って行われる予定で、来場者プレゼントやイベントが準備されていた。

 カルピスが発売されたのは1919(大正8)年の七夕、7月7日だった。ちょうど100周年を迎えている。甲子園球場誕生より5年早い。

 「初恋の味」というキャッチフレーズが初めて登場したのは1922(大正11)年。アサヒ飲料の公式サイト「カルピスの歴史」にある。新聞広告で「この一杯に初恋の味がある」と打った。当時は相当に刺激的だったことだろう。

 生みの親、三島海雲(かいうん)が考えたコピーだ。商品名も「カル」はカルシウム、「ピス」はサンスクリット語のサルピス(熟酥=じゅくそ)から命名したそうだ。

 三島はアイデアマンで知られた。歌人・与謝野晶子や漫画家・岡本一平を広告に起用。また新規事業も開拓していった。

 今の阪神に欲しいのはこのアイデアである。昨年10月、新監督として矢野燿大を起用し、コーチングスタッフが固まった時、ある球団幹部が漏らしていた。

 「コーチ陣は監督を支える存在であってほしい」は当然のことだ。「監督は1年目。コーチ陣も1軍では経験の浅い人が多いようだ。勝っている時はいいが、負けが込んできた時、監督に対して、低迷打開に向けて、いろいろなアイデアを出せるかどうか……」

 目下6連敗中。間にオールスターブレーク(球宴前後の空白期間)をはさんでおり、7日・広島戦(甲子園)以来、12日間も勝ち星がない。つらい日々が続いている。

 1990年代の阪神低迷期、チームディレクターだった小林治彦(故人)はフロント陣に向け、「何かアイデアを出せ」が口癖だった。「どんな小さなことでもいい。今を変えるアイデアを出しあおうじゃないか」

 フロントもコーチも、今はアイデアが欲しい。妙案を探るためにも、試合が中止となった1日を大切にしたい。大正期に「初恋の味」と打ったような、発想の時である。=敬称略=(編集委員) 

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