高校野球で町おこし 高知県檮原町の試み

[ 2018年6月20日 07:00 ]

高校野球の今、そして次の100回へ(3)

雄大なカルストに抱かれ、自然豊かな檮原の町並み
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 地方創生が叫ばれる中、少子高齢化が進む全国の自治体では、その流れを食い止めようとさまざまな試みを実施している。国民的人気を誇る高校野球を起爆剤にしようとするケースも増加。高知県北西部にある檮原(ゆすはら)町は町内唯一の檮原高校に2007年4月に硬式野球部を創部。統廃合の危機を乗り越え、昨年は初めて高知大会決勝に進んだ。行政、町民、高校が一体となった各地の「町おこし」の現状に迫った。

 標高1455メートルにもなる雄大な四国カルストに抱かれ「雲の上の町」と形容される愛媛県との県境にある檮原町。1957年に1万1217人だった人口は84年には5392人に半減。現在は3572人(4月30日現在)が暮らすが高齢化率は実に40%を超える。そんな山あいの町に響く球児の明るい声。硬式野球部の存在こそ、町の大きな希望となっており吉田尚人町長は言葉に力を込めた。

 「甲子園へ行く、行かないは別にして、町民の方が夢を持つことができる、この幸せ。子供たちには、周囲に期待してくれる大人がいることも理解して頑張ってもらいたい」

 2006年は定員80人に対し、新入生はわずか17人。高知の県立高校は新入生が2年続けて20人を割ると統廃合の対象になる規定があった。学校存続のため、地域活性化のために…。当時の校長や町の有力者は、過疎と高齢化脱却の起爆剤を高校野球に求めた。

 野球部の前身である同好会は06年夏に4人でスタート。翌07年に49人が入学し10人が入会したことで同年4月創部にこぎつけた。町の支援は手厚く、両翼100メートル、中堅120メートルある町民グラウンドで練習。無償提供される43人乗りのバスで遠征もできる。町内以外の生徒を受け入れるため、幼稚園をシェアハウスに改修した第2寮も無償貸与し、地元の有志からは30キロの米俵が毎年60〜70個も届く。部員は冬場の雪かきや夏祭りの準備、清掃活動などで町民と触れ合い、恩返しする。

 13年4月には、1985年センバツで優勝した伊野商でコーチ、その後は監督を務め、07年には室戸を率いセンバツ8強入りした同町出身の横川恒雄監督(65)を招いた。翌14年の夏に高知大会8強入りするなど結果を出して檮原をアピール。「監督さんの指導と寮など野球をする環境の良さにひかれた」と高知市出身の早川翔主将(3年)が話すなど狙い通りの成果が出ている。指揮官も「地域とともに、地域に根差した野球」を掲げ「町の人のおかげで野球ができる」と感謝する。

 檮原町教育委員会の社会教育スーパーバイザーの肩書も持つ横川監督は町外や県外の小中学校訪問に加え、大きな仕事の一つが夏合宿の誘致。環境や宿泊施設が充実する同町には野球部に限らず、剣道部や吹奏楽部など高校、大学を問わず十数クラブが訪れる。今夏は2300人を見込む。「地域における高校のあり方、野球を起爆剤にしてどう人を集めるか」に腐心してきた。

 創部11年目の昨年は初めて夏の高知大会決勝まで進んだ。明徳義塾に敗れたが県立春野球場で町民の5分の1にあたる約700人が声援を送った。甲子園出場は、町にとっては大きな夢の一つ。久保栄八副町長は「(甲子園に出場し試合の日に)人口がゼロになる日、そういう日がやってくれば。子供の活躍は応援している者や町民の励み。心の豊かさを与えてくれる」と話す。押し寄せる少子高齢化の波――。難題に、檮原は行政、町民、高校が一体となって向き合っている。 (吉仲 博幸)

 ◆高知県檮原町 高知県北西部に位置し、愛媛県との県境にある人口3572人(4月30日現在)の小さな町。標高1455メートルの雄大な四国カルスト台地の山々に囲まれ、その裾野を清流・四万十川が流れる。面積236.45平方キロの91%を森林が占める。

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