東海大海洋学部“本家”に逆転勝ち8強

[ 2009年6月11日 06:00 ]

<東海大学海洋学部・東海大学>東海大学を破り、歓喜の東海大学海洋学部ナイン

 全日本大学野球選手権第2日は10日、神宮球場と東京ドームで1回戦2試合、2回戦5試合が行われた。神宮球場第1試合では前日、初陣で全国1勝を挙げたばかりの東海大海洋学部が、昨年まで2年連続準優勝の“本家”東海大に3―1で逆転勝ちする大金星。初出場でのベスト8進出を決めた。また、今秋ドラフト上位候補の法大・二神(ふたがみ)一人投手(4年)が第4試合に登場。白鴎大相手に無四球で6安打完封勝利を飾った。

【日程と結果


 試合後の指揮官のつぶやきがすべてだった。

 「あしたも試合あるんだっけ――」

 それもそのはず。3度の大学日本一を誇る“本家”が相手とあって、荷物をまとめて宿舎を出てきたのに鮮やかな逆転勝ち。会見場でも大村監督は夢心地な様子だった。

 「相手は本当の横綱で雲の上のチーム。まさか勝てるとは。せめて7回まではやりたいと思ってたぐらいで…」。コールド回避どころか、大会史上に残るほどの大金星。1点を追う7回2死二塁から中村一が初球のスライダーを右翼席へ逆転2ラン。高校時代を含めて公式戦で1本も本塁打を打ったことのない男は値千金の一打に「体がうまく反応しました。本当に夢みたい」。8回には遠藤のソロで加点。指揮官は「1試合2発なんてありえない」と目を丸く見開いた。

 “本家”のような恵まれた環境ではない。大学から部の予算はない。部員73人から毎月5000円を徴収。年間400万円強の部費と後援会からの援助だけで用具代や遠征費をまかなう。部員は勉強と野球の忙しい合間を縫ってアルバイトもこなさなければならない。逆転2ランを放った中村一は耐震構造の研究を行う4年生だが「牛丼の松屋や大学の清掃などをやりました」という。

 打撃練習では竹バットを使用。「木のバットは1万円以上しますが、竹バットなら4000円ぐらいですから。本当にお金ないんですよ」。甲子園経験者は広島・高陽東出身の下見ただ1人。ベンチ入り25人中15人までが甲子園経験者の“本家”とは大違いだが、創意工夫で下克上を果たしての8強進出を決めた。

 中村一はいう。「東海大を倒したんだから、もう簡単には負けられない」。無欲だった海の男たちが、少しずつその気になり始めた。

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2009年6月11日のニュース