メジャー挑戦の先駆者・野茂が現役引退

[ 2008年7月18日 06:00 ]

2度目のドジャース時代の野茂

 米球界へのパイオニアとして一時代を築き、日米通算で201勝を挙げた野茂英雄投手(39)が現役を引退することが17日、分かった。野茂はロイヤルズの一員として今年4月に3年ぶりのメジャー昇格。しかし結果を残せず、同22日に戦力外通告を受けた。その後も獲得に乗り出す他球団がない状況に加え、06年6月に手術を受けた右ひじの状態も万全ではないことから、現役生活にピリオドを打つことを決意した。

【野茂プロフィル&成績


 40歳を目前にした野茂が、ついにユニホームを脱ぐ。89年にドラフト1位で近鉄(当時)に入団。95年にドジャースに移籍し、今や隆盛を誇る日本人メジャーリーガーのパイオニアとして栄光の歴史を築いてきた。しかし年齢的な衰えに加え、06年6月に手術した右ひじの状態も万全ではない。「まだまだやりたい気持ちが強いが、プロ野球選手としてお客さんに見せるパフォーマンスは出せないと思う。同じように思っている球団は多いと思う」。もはやかつてのような高いレベルでのプレーはできない。そんな思いが引退を決意する引き金になった。野茂らしい“美学”だった。
 渡米1年目の95年にはオールスター戦に先発し、ナ・リーグ新人王も受賞。史上4人目となるア・ナ両リーグでのノーヒットノーランも達成した。だが、06年6月に右ひじ遊離軟骨除去手術を受けて以降は苦闘続き。07年オフにはベネズエラでのウインターリーグにも参加。今年に入ってロイヤルズとマイナー契約を交わし、4月10日のヤンキース戦で1000日ぶりとなるメジャー登板を果たした。しかし3試合で0勝0敗、防御率18・69の成績で同20日に戦力外通告。その後は他球団でのプレーを模索していたが、手を挙げる球団は日米ともになかった。一時帰国していた野茂は現在、米ロサンゼルスに滞在している。
 「トルネード旋風」。海を渡っての野茂の米球界での活躍は、太平洋を挟んで日米で社会現象ともなった。95年、近鉄からは任意引退扱いで渡米。米移籍の方法が整備されていなかった当時は“強行突破”として多くの批判を浴びた。1年目の年俸も当時の最低保障額である10万9000ドル(約1079万円=当時)。そんな中でたぐいまれな力を発揮し「ノモマニア」と呼ばれるファンを熱狂させた。日本人選手の評価も大いに高め、長谷川(エンゼルスなど)やイチロー(マリナーズ)、松井(ヤンキース)、松坂(レッドソックス)…。その後に続いた数多くの選手は、すべて野茂の“恩恵”を受けているといっても過言ではない。
 太く、そして長かった野球人生。野茂は納得しての引退かの問いに「そんなことは全然ない。引退する時に悔いのない人生だったという人もいるが、僕の場合は悔いが残る」と話した。豪快なフォームに切れ味抜群のフォーク、寡黙で一本気な人柄…。日本人メジャーリーガーが隆盛を迎えた陰で、パイオニアが静かに現役生活にピリオドを打った。

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