川内 リオへ「進退懸ける」酷暑レース惨敗なら五輪断念も

[ 2013年8月12日 06:00 ]

真剣な表情で質問に答える川内

 惨敗なら五輪断念も――。男子マラソン代表の川内優輝(26=埼玉県庁)が11日、自身2度目となる世界選手権出場に向けて成田空港からモスクワに出発した。酷暑が予想される17日号砲のレースの結果次第では、今後は五輪や世界選手権といった夏開催レースからの撤退も示唆した。最強市民ランナーは「進退を懸けた戦いになる」と悲壮な決意を口にした。

 出国ラッシュでにぎわう成田空港に似つかわしくない沈痛な面持ちだった。「今回失敗したら後はないと思ってやっていく。進退を懸けた戦いになる」。川内はなんの前触れもなく「進退」という言葉を口にした。

 趣味で走る市民ランナーの進退って何なのか?そんな疑問にはこう答えた。「僕に引退はありません。秋と冬はいつまでも走るけど、夏のレース、世界選手権や五輪に対するアプローチを考える」。先月の士別ハーフでも暑さで力を出せず「やっぱり夏は弱い」と思い知らされた。進退発言は苦手な夏のみ引退するという季節限定のプランだった。

 とはいえ、夏には世界選手権も、五輪もあり、決断は容易ではない。それができるのは、川内が今大会を集大成と位置づけているからだ。初出場で「よく分からないままだった」という前回11年の大邱大会(韓国)は18位。しかし、この2年間は国内に限らず、海外でのレースにも積極的に参加し、気温差や時差を克服するすべを身につけてきた自負がある。

 以前から公言している目標は6位。一方、進退の基準は「納得できるレースができるかどうか」。立ちはだかるのはやはり夏の暑さで、10日の女子マラソンでも気温が30度を超えて、棄権者が続出した。「コース上は37度とも聞いた。そんな状況でフルマラソンを走ったことはない。怖さはある」。5キロ地点では氷水をかぶる予定でいるが「体がどう反応するか」と不安は尽きない。

 今遠征には支えの一つとして昔からの練習ノートを持参した。ケガに苦しんだ高校時代や初出場した2年前、「自分の中で特徴的だった年」の練習ノートを4冊。「この20年、350レースを走ってきた経験を生かして頑張りたい」という気持ちの表れだ。それで惨敗するようなら、ランナー人生を全否定するようなもので、五輪も諦めざるを得ないほどのショックを負いかねない。「苦しくても意識が飛ぶまで、動けなくなるまで戦わないと。僕が死んだからといって誰も困ることはない」。そんな悲壮な決意を胸に、川内が限界の先へと特攻を仕掛ける。

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