難解な勝負に一閃 自王の制約を読み切った藤井王将の▲4二角成

[ 2023年2月27日 05:28 ]

第72期ALSOK杯王将戦第5局第2日 ( 2023年2月26日    島根県大田市「さんべ荘」 )

A図
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 【関口武史・第2日のポイント】双方の長考を経て終盤戦に入った2日目。封じ手前の▲5三桂成が秀逸。後手は陣形をまとめることができなくなっている。△5三同角ならば▲2六歩で飛車の逃げ場がない。

 △5三同王にも▲2六銀が気持ちの良い活用で△同飛は▲3五角で後手不利。仕方のない△7五飛に▲7六歩がきめ細かい対応で△5五飛に対する▲6六角が痛打。△4二王と銀にひもをつけて粘るが、その後に▲2五飛の両取りと流れるように先手に好手が続く。

 やや苦しめの羽生が△7七角成から実戦的に粘る手順にあやを求める。羽生からの長期戦の打診に対し、▲8五飛が目の覚めるような一発回答だった。

 飛車回り自体は平凡な回避なのだが以下△7三桂~△6五桂~△7七桂不成と後手の桂を最大限活用させる驚きの一手。一切の妥協をそぎ落としたような踏み込みで、羽生に対して「肉を切らせて骨を断つ」という藤井の寄せを見守る雰囲気が控室に漂った。

 休憩明け、羽生が△4一金と執着を感じる金打ちで頑強に対抗すると藤井が迷う。さらに△5六歩で形勢は急接近。続けて△3三桂と桂馬を跳ね出した手が好手で混戦になった。最終盤▲5四桂(A図)と打った局面がハイライト。ここで△5七銀打▲同銀△同桂成▲同王△8四角と王手竜取りをかけていれば、難解な勝負が続いていた。羽生は自信が持てず、△5一銀打と受けたが、▲4二角成が決め手一閃(いっせん)。自王の制約を読み切った藤井が制し、防衛に王手をかけた。(スポニチ本紙観戦記者)

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