これが盗塁の「極意」だ! 阪神OB・赤星氏が近本に“幻惑走法”伝授 「足から帰塁」で油断させろ

[ 2023年2月5日 05:15 ]

臨時コーチの赤星氏(右端)の指導で走塁練習を行う近本(中央)(撮影・大森 寛明)
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 阪神の近本光司外野手(28)が沖縄・宜野座キャンプ第2クール初日の4日、臨時コーチとして指導を開始したOBの赤星憲広氏(46=本紙評論家)から盗塁増の極意を教わった。中野、島田、熊谷、植田とともに受けた直接指導では、一塁けん制球で足から戻る方法を徹底練習。滑らずに余裕を持って帰塁することで捕手に二盗の気配を悟らせない“幻惑走法”を学んだ。5度の盗塁王に輝いた師匠からは、打率3割30盗塁のノルマを課せられた。 

 練習後、近本の表情が明るかったのは、よほどいい話を聞けたからだろう。尊敬する赤星臨時コーチの直接指導。これまで取材などで対談する機会はあっても、グラウンド内で話を聞くのは今回が初で、「また違う話ができてよかった」と声を弾ませた。

 全体メニュー終了後の個別練習で足のスペシャリスト限定のレッスンを受けた。現役時代5度の盗塁王に輝いたレジェンドから授かったものは、一塁への帰塁方法。約1時間に及んだ講義の半分以上の時間を、ヘッドスライディングではなく、足から戻る練習に費やした。新たな視点と珍しい技術練習に触れ、視界が広がった。

 「キャッチャー目線で言うと、手で帰った時は“あ、走るんかな”と思うじゃないですか。それを、赤星さんは“足で帰ることで(捕手に)余裕を見せていた”と言っていた。それに、僕は足で帰る方が、手で戻るよりもしんどくない。その点では、うまく使いたいな、と」

 二盗をする気がないから、足から悠々戻れますよ――。そんな気配を醸し出すことで、盗塁成功につながる可能性があると、アドバイスされたのだ。必殺“幻惑走法”の術。手で戻るか、足で戻るか、とっさの判断は困難なため、さらに練習を重ねる必要がある。

 「実戦でできるのかできないのか、もう少しやってみたい」

 チームは05年を最後に優勝から遠ざかっている。当時は選手、監督という関係だった岡田監督から請われ、赤星氏は後輩のために一肌脱いだ。阪神では11年ぶりに臨時コーチを務めた今回、足の帰塁を伝え、「手から戻るとケガにもつながりやすい」と、もう一つの効果を挙げるとともに、「30盗塁は最低でもしてもらいたいけど、盗塁が何に生きるかが大事。得点を増やすためにどうするか。求められているのは盗塁だけじゃない」と、まだ達成していない「3割30盗塁」とノルマに課した。

 近本は守備練習の後も個別で15分ほど話し込んだ。中堅の守備の内容は、「ちょっと言えない」と秘密としたものの、走と守で大きなヒントを得たことは明白。師匠が滞在する3日間で奥義の一端をつかめば、11年以降、セ・リーグでは出ていない40盗塁も、視野に入る。(倉世古 洋平)

 <赤星氏の臨時コーチ>10年2月22日、オリックスの高知キャンプを訪れた際に、岡田監督からの依頼を快諾。野手全員に約15分間のサプライズ指導を行った。11年2月3日、楽天の久米島キャンプでは星野監督の依頼で聖沢ら4選手を指導。12年2月8日には阪神の宜野座キャンプで野手全員にスタートとスライディングを中心に指導した。昨年2月には日本ハム・新庄監督の要請を受けて名護キャンプで指導を行った。

 <中野、島田、植田、熊谷も「赤星塾生」に>近本とともに中野、島田、植田、熊谷も「赤星塾」で学んだ。猛虎が誇る俊足5人衆がそろって超一流のイズムに感銘を受けた。

 一昨年の盗塁王で、昨季も23盗塁の中野は「良かったらそっちに変えながらやっていこうと思う」と、盗塁企図の際の第1歩目を昨季までの左足スタートから、赤星氏に指導を受けた右足スタートに“転向”する可能性を示唆。この日は個人的に、WBCに向けた力み解消法についても助言を受けたという。

 また、18年に19盗塁の植田が「今までやっていなかった帰塁の仕方とかスタートの切り方、考え方とか、いろいろ聞いて話して…これからちょっとやっていきたい」と話せば、同じく足のスペシャリストとして期待される熊谷も「的確なアドバイスをもらってありがたかったし、いい経験になりました」と、こうべを垂れた。

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2023年2月5日のニュース