【内田雅也の追球】100年の記憶と敬意 来年100歳を迎える甲子園をどう祝うか、老人力の出番

[ 2023年1月26日 08:00 ]

2012年4月20日、100周年記念式典が行われたフェンウェイ・パーク。200人以上のOBが参加した。
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 甲子園歴史館運営会議の会合が大阪・梅田のザ・リッツ・カールトン大阪であった。コロナ下で開催が見送られ、集まったのは3年ぶり。第14回理事会・定例報告会で、昨年3月にリニューアルした同館の営業概要や来年度予算などが示された。

 この運営会議は甲子園球場建設前年1923(大正12)年にあった顧問委員をなぞっている。日本に本格的球場などなかった時代、球界の重鎮を招いて計画を練った。委員の1人だった佐伯達夫(後の日本高校野球連盟会長)は自伝で<ピッチャープレートの高さ、太陽光線の関係、バックネットの高さなど、わからないことずくめ>で、何度も会合を重ねた。

 驚くのは委員の若さである。佐伯31歳、小野三千麿26歳、小西作太郎31歳、腰本寿29歳……と20~30代。設計を担当した野田誠三は阪神電鉄入社3年目28歳だった。日本野球の草創期、若き大正野球人のロマンが詰め込まれ甲子園は生まれた。

 反対に今の外部有識者顧問は高齢である。吉田義男89歳、成瀬國晴87歳、佐山和夫86歳、山下智茂77歳、川藤幸三73歳、長島三奈54歳。平均年齢で50歳ほど差がある。

 今はこのベテランの力を期待したい。日本の野球は長い時をかけて成熟してきた。顧問は皆、甲子園への思い入れが深い方々である。

 とりわけ甲子園球場は今年8月1日で白寿99歳、来年で100歳を迎える。どう祝うのか、老人力の出番である。

 先に100周年を迎えたボストンのフェンウェイ・パークは2012年4月20日の式典にあわせ、米メディア「SBネーション」は<100年の時、100万の記憶>と特集を組んでいた。当日はカールトン・フィスク、カール・ヤストレムスキー、ビル・バックナー、大家友和ら200人以上のOBらが招待されて集まり、実に壮観だった。

 先人へ敬意を示す式典が人びとの記憶に報いるわけだ。甲子園も来年、タイガースOB、高校野球の元球児、監督らを多く招いてはどうだろう。

 フェンウェイ同様、人はそれぞれの思い出とともに甲子園を愛している。阿久悠作詞の選抜高校野球大会歌『今ありて』の<踏みしめる土の饒舌(じょうぜつ) 幾万の人の思い出>である。
 歴史館の顧問の知恵で先人への敬意を示したい。そして多くの阪神、高校野球ファンの思いに応えたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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