【玉ノ井親方 視点】宇良の金星は見事だが、横綱らしい相撲が取れない照ノ富士

[ 2022年9月16日 19:50 ]

大相撲秋場所6日目   ○宇良(寄り切り)照ノ富士● ( 2022年9月16日    東京・両国国技館 )

<秋場所・6日目>照ノ富士(中央左)を寄り切りで破る宇良(撮影・西尾 大助)
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 珍しい相撲だった。横綱が簡単に引いて、宇良にあっさり寄り切られた。良い時の照ノ富士なら、差されても両手で抱え込んだり、右か左、どちらかのかいなを差して、前に出ようとする。だが、右膝の状態が悪く、足に力が入らないせいか、下から押し上げられるとすぐに棒立ちになって、踏ん張ることができなくなってしまう。

 それでも宇良の動きをよく見ながら、はたいたり腕を振り払ったりして、必死に何かを仕掛けようとしていた。だが、いかんせん体と気持ちがうまくかみ合わず、横綱らしい相撲を全く取り切れなかった。

 見方を変えれば、それだけ宇良が考えた相撲を取ったとも言える。同じ小兵の翔猿が横綱に勝った2日目の一番が参考になったのだろう。安易に相手の懐に入っていかず、十分に間合いを保って、横綱がしびれを切らすのを待った。そして照ノ富士が自分を呼び込もうとして、腰高になった瞬間を見逃さず、一気に中に入って前に出た。

 宇良は以前と比べ体が大きくなり、重さが出て簡単に押されなくなった。天性の体の柔らかさで、多彩な技を繰り出すのが魅力だったが、その分、無理な体勢から反撃に出て、ケガが耐えなかった。しかし、最近は強引な取り口が影を潜め、相撲内容も安定するようになった。

 ケガから復活して5年ぶりの金星を奪ったのは立派。ただ、照ノ富士の状態が状態だけに、何とも言えない一番となった。それでも宇良のような力士が上位で暴れてくれると、間違いなく場所が盛り上がる。
  (元大関・栃東)

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2022年9月16日のニュース