米17歳マリニン 4回転半 世界初成功!羽生さんが切り開いた道――「間違いなく僕を刺激した」

[ 2022年9月16日 05:25 ]

フィギュアスケート USインターナショナルクラシック第2日 ( 2022年9月14日    米ニューヨーク州レークプラシッド )

7月の「THE ICE 2022」で演技するイリア・マリニン(撮影・長久保 豊)
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 男子フリーが行われ、米国の17歳イリア・マリニンが国際スケート連盟(ISU)公認大会で初めてクワッドアクセル(4回転半)を成功させた。4回転で唯一、成功者のいなかったジャンプを決め、フィギュア界に歴史をつくった。マリニンは全体トップの185・44点をマークし、合計257・28点でショートプログラム(SP)6位から逆転優勝。女子SPでは北京五輪代表の河辺愛菜(17=中京大中京高)が62・68点で2位発進した。

 緩やかな助走から、軽やかに跳び上がった。17歳のマリニンが、前人未到の大技4回転半に挑み、鋭い回転から危なげなく着氷。出来栄え評価(GOE)で1・00点を引き出す加点で、史上初の成功となった。演技後は笑顔が止まらず、「とても気持ちが良かった」と振り返った。

 これまで4回転半を着氷した動画をSNSに投稿。7月のアイスショー「ドリーム・オン・アイス」で初来日した際も、練習で何度も着氷するなど超大技の成功は時間の問題だった。4回転半はプロ転向した羽生結弦さん(27)が北京五輪で挑戦したジャンプ。回転不足で転倒したが、主要国際大会で初めて「4回転半に挑んだ」と認定されていた。その姿が「間違いなく僕を刺激した」とマリニン。羽生さんがこじ開けた扉から、新たな世界が広がった。

 両親とも元ウズベキスタン代表で五輪出場経験のあるフィギュア一家に生まれ、母タチアナ・マリニナさんと父ロマン・スコルニアコフさんの指導を受けながら成長を遂げた。昨季は全米選手権で準優勝を果たすもシニアでの経験不足のため北京五輪代表から落選。それでも、世界ジュニア選手権で優勝するなど着実にステップアップ。今大会もアクセルに加え、ルッツ2本、サルコー、トーループと4回転4種5本という異次元の構成で挑んでいた。まだ17歳。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の星は、まだまだ伸びしろがある。

 今後は、10月8日にさいたまスーパーアリーナで行われるジャパン・オープンに出場予定。グランプリシリーズは第1戦スケートアメリカ(10月21~23日、ノーウッド)、第6戦フィンランド大会(11月25~27日、ヘルシンキ)にエントリーしている。世界選手権優勝の宇野昌磨(トヨタ自動車)、北京五輪銀メダルの鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)ら日本勢と世界の頂を争う強力ライバルに注目が集まりそうだ。

 ◇イリア・マリニン 2004年12月2日生まれ、米国バージニア州出身の17歳。11年からスケートを始める。21年のジュニアGPシリーズでは2連勝。昨季22年の世界選手権では9位。母タチアナ・マリニナさんは四大陸選手権、GPファイナル優勝経験があり、98年長野五輪8位。コーチは両親とラファエル・アルトゥニアン氏。自己ベストはSP100.16点(世界歴代10位)、フリー187.12点(同8位)、合計276.11点(同10位)。趣味はスケートボード。1メートル68。

 ▽フィギュアスケートのジャンプ 全6種類の中で唯一、前向きに踏み切るアクセルが最も基礎点が高い。現行ルールのジャンプ基礎点は各4回転まで設定され、アクセルが最難関の12.50点。4回転の各ジャンプでも主要国際大会で成功者がいないのはアクセルだけだった。88年の4回転トーループから34年で全ての4回転ジャンプで成功者が現れた。また、1882年にノルウェーのアクセル・パウルセンが世界で初めて跳んだ1回転半がアクセルジャンプの起源。マリニンは140年の歴史で初めて4回転を跳んだ選手となった。

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