【独占手記】レジェンド葛西紀明が愛弟子2人へエール 陵侑よ俺を超えろ!有希よ己を超えろ!

[ 2022年1月2日 05:30 ]

愛弟子の小林陵にエールを送るレジェンド葛西

 北京でオレを超えていけ!ノルディックスキー・ジャンプ男子で冬季五輪史上最多の8度出場を誇る“レジェンド”こと葛西紀明(49=土屋ホーム)が2022年の幕開けにスポニチに独占手記を寄せた。土屋ホームの兼任監督は北京冬季五輪に出場が濃厚な所属先の愛弟子たちに熱いエール。新年に「頂点」を誓った男子のエース小林陵侑(25)には自身を超える悲願の金メダルを期待。女子の伊藤有希(27)の表彰台も祈念した。

 あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!僕はまだまだ元気!26年五輪に向けて、頑張ります。

 今の陵侑のジャンプはW杯で総合優勝を果たした2018~19年シーズンに近い状態だと僕はみています。今季のW杯もまだまだ勝てるし、五輪金メダルの可能性は十分でしょう。昨季は一度調子を落としかけたけど、また盛り返してきました。陵侑ってコメントは「今どきの若者」って感じだけど、自分でメモを取っているようで、しっかりしているんです。そこに気づきがあるから、調子を上げていける。気づく人、ひらめく人は、そうでない人と差が広がるもの。僕に似てるのかな(笑い)。

 誰にもまねできない陵侑のジャンプは、踏み切り時にしっかりとスキーを踏んでジャンプ台に圧をかけて、ガツンと行くんです。僕は揚力を得て飛ぶイメージの“タメ”が好きなんですけど、陵侑にはタメってものがない。自分で体を持ち上げるように、思い切り踏み切って飛ぶ。僕は7~8割くらいの力で飛ぶんですが、陵侑は持っている力を全部使っているように見えます。ほら、ゴルフのドライバーは100%の力で打ちたいけど、打つとあちゃこちゃ行くじゃないですか?普通は当たりが安定しない。でも、陵侑は100%の力でも、安定しているんです。

 僕が1989~90年シーズンから本格的にW杯に参戦して、30年以上がたちました。本当に100%の力で踏み切っているように見えたのは、モルゲンシュテルン(※1)くらい。モルギーはパワーが凄かったけど、それに加えてスムーズさや滑らかさがあったのはシュリーレンツァウアー(※2)かな。陵侑はモルギーのパワーにシュリーのスムーズさもあります。高校生の陵侑を初めて見た時もシュリーのジャンプに似ていると思ったし、この選手は絶対に伸びると思いました。シュリーが男子のジャンプW杯史上最多の53勝を挙げたように、今の陵侑には誰も勝てないんじゃないかな。

 100%の力を使う、といっても見え方と本人の感覚は違うものなんですよね。陵侑自身は「3、4割くらいの力でしか飛んでいない」って言うんです。思い浮かべたのは柔術。普段の動きは柔らかいけど、技に入る瞬間は120%くらいの力が出ている。もしかしたら、それに近いのかもしれないと分析しています。ジャンプは踏み切りの一瞬が非常に重要。テークオフの瞬間だけ、100%以上の力を集中させているのかもしれません。

 気になる点があるとすれば、五輪のプレッシャーですね。W杯では“勝ちグセ”がついていても、4年に一度という思いがプレッシャーになるんです。そして、その重圧に勝たないとメダルは見えてこない。ここで失敗をしたらどうしよう、という弱い気持ちが出たらメダルは獲れない。僕はソチの時に「絶対に獲れる」と思って、やってました。陵侑はもともと緊張するタイプで「緊張して失敗するんですよ」と相談されたので、僕が実践した呼吸法を教えたことがあるんです。W杯で勝ち始めてから「最近やっていないですね」と笑っていたので、しっかり成長してくれたと信じています。

 陵侑が五輪で金メダルを獲るのは、うれしいですよ。負けず嫌いだし、昔の僕だったら悔しかったかもしれないけど、五輪に出られないのは自分が下手くそだからと今は割り切れています。素直に、僕を超える金メダルを獲ってほしい。本番まで1カ月ちょっと。これからはW杯でがんがん勝って自信をつけて、ケガや故障をしないことが一番大切。スーツの規定違反での失格や、コロナ陽性での欠場もあったけど、前半戦で良かった。失敗から学ぶのは、陵侑の得意とするところ。個人2冠で、あっさり僕を超えてほしいです!

 遠征の前の有希は、いいジャンプをしていたので期待していましたが、W杯では10位前後に入ったと思ったら予選落ちもありました。今季は波が激しい印象ですね。

 この夏は一生懸命パワー系のトレーニングをしていました。クラマー(※3)ら海外の選手を意識して、私も筋肉をつけないと、という気持ちだったんでしょう。それが良い方向に行けばいいが、かみ合わなくなる場合もあります。五輪シーズンに自分のジャンプを変えるとなると、修復に時間がかかります。今は原因をしっかり分析して、ジャンプにフィードバックしてほしい。平昌五輪のあと、燃え尽き症候群のような感じから、よくここまではい上がってきたと思います。人一倍頑張ってきた選手なので、なんとかメダルを獲ってほしいですね。(14年ソチ五輪ジャンプ個人ラージヒル銀メダリスト、土屋ホームスキー部兼任監督)

 ◇葛西 紀明(かさい・のりあき)1972年(昭47)6月6日生まれ、北海道下川町出身の49歳。五輪は92年アルベールビルに19歳で初出場し、18年平昌まで冬季史上最多8大会連続出場。94年リレハンメル団体銀。日本選手団の主将を務めた14年ソチはラージヒル個人銀、団体銅。W杯569試合出場はギネス世界記録に認定されている。家族は妻と1男1女。1メートル76、59キロ。

 ◇小林 陵侑(こばやし・りょうゆう)1996年(平8)11月8日生まれ、岩手県八幡平市出身の25歳。5歳でスキーを始め、盛岡中央高から15年に土屋ホーム入社。18年平昌五輪出場。18~19年シーズンに日本人初のジャンプW杯総合優勝。兄・潤志郎、姉・諭果、弟・龍尚もジャンプ選手。1メートル74、59キロ。

 ◇伊藤 有希(いとう・ゆうき)1994年(平6)5月10日生まれ、北海道下川町出身の27歳。父・克彦さんが指導する下川ジャンプ少年団で4歳からジャンプを始める。下川中から下川商を経て、13年に土屋ホーム入社。14年から五輪2大会連続出場。世界選手権では個人銀2、混合団体金、銅2。1メートル61、47キロ。

 ※1モルゲンシュテルン オーストリア出身のジャンプ選手。06年トリノ五輪で個人ラージヒルと団体で2冠。W杯は総合優勝2度、個人通算22勝を挙げた。

 ※2シュリーレンツァウアー オーストリア出身のジャンプ選手。W杯では男子史上最多の通算53勝、総合優勝2度。五輪は団体で金、銀、個人銅2。昨年9月に引退を表明した。

 ※3クラマー オーストリア出身で現在20歳の新進気鋭の女子選手。今季のW杯では開幕戦で圧勝するなど、前半戦だけで5勝。総合首位を独走している。

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