橋本 0・017点差で銀、逆転ならず 五輪と2冠逃す「勝ち切る強さなかった」

[ 2021年10月23日 05:30 ]

体操 世界選手権第5日 ( 2021年10月22日    福岡・北九州市立総合体育館 )

男子個人総合決勝、銀メダルに終わり悔し気な橋本大輝(右)と金メダルの張博恒(左から2人目)(撮影・小海途 良幹)
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 男子個人総合決勝が行われ、東京五輪金メダリストの橋本大輝(20=順大)は合計87・964点で銀メダルだった。87・981点で金メダルを獲得した張博恒(21=中国)とは、わずか0・017点差。09年大会を20歳9カ月で制した内村航平(32=ジョイカル)を上回る、20歳2カ月での日本最年少優勝に届かなかった。23日は種目別決勝の床運動、あん馬に出場する。

 敗れた悔しさより、ライバルへの敬意が上回った。21歳と同世代の張と0・017点差の銀メダルだった橋本は、すっきりした表情で言った。「彼(張)がリアルチャンピオン。悔しさは1ミリくらいで、やりきった気持ちが強い。自分には勝ち切る強さがなかった」。チーム事情で張が出場しなかった東京五輪を制し、張がいる世界選手権でタイトルに届かなかった。

 史上最年少で個人総合を制した東京五輪から86日。テレビ出演などで多忙を極めた他、9月4日には全日本学生選手権に出場するなど過密スケジュールだった。無尽蔵の体力から「スタミナ君」のニックネームを持つものの疲労を訴える日が増えた。「6種目通そうと思ってもリタイアしてしまったり。調整力がなかった」。万全の状態には程遠かった。

 2種目目のあん馬で張が落下。突き放すチャンスが到来したが、次に演技した橋本も落下した。「集中力のなさが出た」。1位の張と0・35点差の2位で最終種目の鉄棒へ。張は好演技で14・800点をマークし、逆転戴冠には15・150点超が必要だった。「完璧にやらないと勝てない点数だなと思った。演技前、負けるかなと思った」。死力を尽くした末に着地が動き、黄金の輝きは消えた。

 東京五輪後、自宅に戻ると、個人総合と種目別鉄棒の2つの金メダルを仏壇に供えた。小さな頃から体育館に送迎するなど、橋本に愛情を注いだ祖父・正尚さんが19年11月に他界。静かに手を合わせ、感謝を伝えた。今大会は愛する祖母・久子さんが会場で観戦。戴冠の瞬間を見せられなかったが、全力の演技は届けた。

 4月の全日本選手権から続いていた個人総合の連勝は4でストップしたが、下を向く必要はない。「新しく頑張る理由が見つかった。いろんなライバルがいて、強くなれる」。北九州から始まったライバルストーリー。リベンジのチャンスは、これから何度も訪れる。

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