自転車オムニアム・梶原悠未 涙の銀メダル「うれしい。でも、悔しい」 競泳から高校で「運命の転向」

[ 2021年8月9日 05:30 ]

東京五輪第17日 自転車・女子オムニアム ( 2021年8月8日    伊豆ベロドローム )

自転車女子オムニアムで銀メダルを獲得した梶原(AP)
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 自転車トラック種目の女子オムニアムで、20年世界選手権女王の梶原悠未(ゆうみ、24=筑波大大学院)が銀メダルを獲得した。自転車の日本女子で五輪の表彰台に立つのは史上初。4種目の合計点で競うレースで、第3種目の苦手エリミネーションで2位と奮闘。最後のポイントレースでは転倒したが、総合2位を守った。五輪に憧れ続け、競泳から自転車に転向した決断が地元五輪で花開いた。

 何を意味する涙か分からなくなった。全レースを戦い抜いた梶原は言った。「メダルを獲れたことは、とてもうれしい。でも、優勝を目標にここまで取り組んできたので凄く凄く悔しい」。首にかけたのは、焦がれ続けた色とは違う銀。それでも、数少ない有観客の夢舞台を走り切り、日本女子の大きな壁をこじ開けた。

 進化は見せた。総合3位で迎えたエリミネーション。最後尾の選手が脱落していくサバイバルレースで最後の2人まで残った。筑波大の卒業論文として戦術技能を研究し続けた課題種目。男子選手の映像も分析し「常に自分が出られる状況を確保」しながら大外から仕掛け続けた。総合2位に順位を上げ、最終種目で落車するアクシデントも乗り切った。

 一つの決断が、人生を変えた。12年夏、中3の梶原はひたすら泣いていた。競泳で全国大会の出場を逃した。「努力って、報われないじゃん」。五輪連覇の北島康介に憧れ金メダルを夢に描いたが、上には上がいた。自問自答し、心の声を聞いた。「何でもいいから一番になりたい」。母・有里さんの勧めもあり、高校から自転車に転向した。

 すぐに出場した全国大会で落車。それでも周囲から「落車が怖いなら一人で飛び出せばいい」と助言を受け、「自分の好きな走りを選択していいんだ」と目を輝かせた。大学からは極限の体力と戦略性で競うオムニアムに挑戦。練習やレース中には何度も吐いた。激しい呼吸が続き、気管の皮がめくれた。想像を絶する試練を乗り越え、世界の頂だけを目指した。

 五輪の1年延期が決まり、ロード練習中に伊豆の二宮神社を通過するたび、心の中で「金メダルを獲得します」と宣言していた。有言実行は次に持ち越された。「まだまだ金メダルに向けて、さらに努力を積み重ねていく」。悔しさはきっと、パリでの輝きを引き立てる財産となる。

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