【荒磯親方 春場所総括】照ノ富士 心技体の進化 決定戦で見せた切り替えの早さ

[ 2021年5月25日 05:30 ]

初日、明生(右)を攻める照ノ富士(撮影・光山 貴大)
Photo By スポニチ

 終盤にもつれた大相撲夏場所は、大関・照ノ富士(29=伊勢ケ浜部屋)が12勝3敗で2場所連続4回目の優勝を飾った。13日目終了時の2差リードから連敗で並ばれるも、決定戦ではメンタルの強さを発揮。21場所ぶりに復帰した大関の安定感が際立った15日間を本紙評論家の荒磯親方(元横綱・稀勢の里)が総括した。照ノ富士は24日、優勝一夜明け会見で綱獲りへの思いを口にした。

 照ノ富士は今場所も「安定感」がありました。成長を感じたのは千秋楽の決定戦。本割では珍しく迷いがあったのか、立ち合いは長めに腰を割って悩んでいるように思えました。しっかり決めないまま立って圧力もかけることができず敗戦。このままでは決定戦も危ないと誰もが思ったはずですが、見事に裏切られました。わずか10分のインターバルで切り替え、別人のような立ち合いの一撃。顔を見合うような体勢にしたことで貴景勝の流れを切った。そうなった時点で四つ相撲の勝利。抜群の集中力を発揮しました。

 力強さに加えうまさも兼ね備える。特に印象深かったのは初日の明生戦です。両腕で抱え込んで攻め立て、自分の腰の高さまで相手を持ち上げた。あの体勢では抵抗する手段もなくお手上げ状態です。名古屋場所では綱獲りに挑戦。右を深く差して横から攻めた遠藤のように相手も対策を練ってくるでしょうが、課題克服は相撲の幅を広げるチャンス。左の前まわしを引いて右を固める。あくまで基本に忠実に。そして相手の持ち味を消すすべに磨きをかければ盤石でしょう。個人的には白鵬に勝って昇進してほしいと思っています。 貴景勝は決定戦に持ち込んだのは評価できます。後半は右肩上がりで調子を上げ、一気に持って行く相撲も何番か見受けられました。身長の低さを克服し、大関の責任を果たしているのは立派。正代は相手の陣地で相撲を取ることが少なかった。大関戦の割り(取組)を外されたことを屈辱と思い、精進あるのみ。立ち合いのバリエーションはもう2、3個増やす必要があるでしょう。

 8番挙げた明生は今後が楽しみな若手です。私と同じ左四つ。現状は腕と体のバランスが悪いように見えます。差し込んだときの体の寄せ方と腕の使い方。もっと腕と体を一体化させ密着できれば、そこから横にさせるなど二次攻撃にもつなげやすくなります。粗削りな分、もっと良くなる可能性は十分。来場所も上位には嫌な存在となるでしょう。(元横綱・稀勢の里)

続きを表示

この記事のフォト

2021年5月25日のニュース