五輪延期をプラスに変えて――桃田賢斗、交通事故から完全復活!「エースとして自覚を持って」

[ 2021年1月2日 09:35 ]

「2020+α」 Restart To TOKYO

昨年12月の全日本総合選手権の男子シングルスで3連覇を果たした桃田
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 空白の時間を、力に変える。バドミントン男子シングルス世界ランキング1位で東京五輪出場を確実としている桃田賢斗(26=NTT東日本)は、昨年1月に交通事故に遭いながら、復帰戦となった全日本総合選手権で3連覇を達成。ゼロからの出発を余儀なくされたが、目標の金メダルへ再出発を果たした。本紙では「2020+α」と題し、挫折や不調などを経て1年延期をプラスに捉えるアスリートを特集する。

 絶望の淵から、はい上がった。昨年12月末。桃田は全日本総合3連覇を達成した。「正直苦しかったし、折れかかった時期もあった。僕は選手としてもっともっと上を目指していきたい」。自身のSNSに思いをつづった。1年延期の夢舞台へ、再び時計の針が動きだした。

 五輪イヤーのはずだった20年、桃田に試練があった。1月に遠征先のマレーシアで不慮の交通事故に遭った。大型トラックと衝突したワゴン車2列目に乗っていた桃田は負傷。搬送された病院に駆けつけた朴コーチに言った。「僕はまだバドミントンできますか?」。2月にはシャトルが二重に見える複視の症状で右目の眼窩(がんか)底骨折が発覚。間近に迫る五輪を前にメスを入れた。

 静養を経て、2月末から練習を再開。須賀隆弘総監督によればNTT東日本の体育館に来た桃田は筋肉が落ち、一回り小さくなった印象だったという。「こういう苦しい状況を乗り切れる男にしかこういう状況は来ない」と励ますと、桃田は言った。「絶対に復帰できます」。最初は目を動かすリハビリや、1歩踏み込みながらラケットを振る地道な作業。だが、練習とはいえコートに立てる喜びに満ちていた。「楽しいか?」。指揮官の問いかけに桃田は「当たり前じゃないですか。めっちゃ楽しいです」と実感を込めた。

 3月に東京五輪の延期が決まり、緊急事態宣言下で練習が制限された。気持ちが折れそうな日々が続いたが、黙々と自身を追い込んできた。須賀総監督は真夏の炎天下、大粒の汗をかきながらNTT体育館の周辺を1人でランニングしていた姿が忘れられないという。「前よりもストイックになっているのは事実」と指揮官。事故を乗り越え、積み重ねた努力は全て金メダルに向けられている。

 国際舞台の最後の試合は事故前日の昨年1月12日のマレーシア・マスターズ決勝。くしくも、そのちょうど1年後の今月12日開幕のタイ・オープンでワールドツアー復帰を迎える。「日本のエースとして自覚を持って挑んでいきたい」。失われた時間は決して無駄 ではない。逆境を乗り越えたトップランカーが、真夏の主役になる。

 ≪“ユーチューバーデビュー”発表≫桃田は12月31日の午後6時、自身のツイッターで“ユーチューバーデビュー”を発表した。「今年は事故もあり、もしかしたらバドミントンができなくなるのではないか?とも考えた年でもありました」と20年を振り返り、「どう広めれば将来バドミントン選手になりたい!と思える子供たちが出てくるか?子供たちの育成ができるか?」と熟考を重ねたと明かした。その上で「YouTubeをやることにします。自分の言葉で伝えられる環境をつくりたかった。それ以外にも来年バドミントン選手として新しいチャレンジを考えていきたい」とつづった。

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