五輪延期をプラスに変えて――体操・内村航平、鉄棒専念で「美しい演技」追求

[ 2021年1月2日 09:05 ]

「2020+α」 Restart To TOKYO

鉄棒でH難度ブレトシュナイダーを決める内村航平
Photo By 代表撮影

 空白の時間を、力に変える。スポニチ本紙では「2020+α」と題し、挫折や不調などを経て1年延期をプラスに捉えるアスリートを特集する。

 オールラウンダーからスペシャリストに転身しても、キングの美学は変わらない。「点数じゃない部分を目標にやっている。どんな人が見ても“凄い”“美しい”と感じてもらえるような演技を目指しているんで」。体操男子の内村航平(31=リンガーハット)は今、見る者の心を1種目で揺さぶるため、真摯(しんし)に汗を流している。

 深刻な両肩痛を考慮し、五輪連覇中の個人総合ではなく、種目別の鉄棒に絞って東京五輪を狙うと決めた。スペシャリスト初戦だった20年9月の全日本シニアは14.200点だったが、11月の国際大会で15.200点、12月の全日本は予選15.533点、決勝15.700点。H難度「ブレトシュナイダー」も演技ごとに精度が増している。より多くの実戦が積める点で、五輪延期も追い風だ。

 国際大会では五輪開催に否定的な意見を念頭に、スピーチで訴えかけた。「何とかできる、どうにかできるやり方が必ずあると思うので、どうか“できない”と思わないでほしい」。もちろん、言葉に説得力を持たせるために、何が必要かは分かっている。「誰が見てもいい演技ができないと、発信しても届かない」。鉄棒の競技時間は約1分。限られた時の中で、キングは雄弁に舞う。

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2021年1月2日のニュース