渋野 苦しみ抜いた一年、V逃すも最後に価値ある戦い「悔しい気持ちはアメリカツアーでないと晴らせない」

[ 2020年12月15日 07:00 ]

米女子ゴルフツアー 全米女子オープン 最終日 ( 2020年12月14日    テキサス州ヒューストン・チャンピオンズGCサイプレイスクリークC=6399ヤード、パー71 )

全米女子オープン最終日の最終ホールでバーディーを取り、笑顔を見せる渋野(AP)
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 悪天候のため前日から順延されていた最終ラウンドが行われ、1打差の単独首位から出た渋野日向子(22=サントリー)は2バーディー、5ボギーの74と3つスコアを落とし、通算1アンダーの4位で大会を終えた。昨年8月のAIG全英女子オープンに次ぐ、日本人史上初のメジャー2冠はならなかった。5打差9位から67をマークしたキム・アリム(25=韓国)が逆転で大会初優勝を手にした。

 気温は6度。北風が吹く厳しいコンディションに手はかじかみ、スイングには狂いが生じた。そこに、メジャーの重圧も加わる。あと一歩のところで、2つ目のメジャータイトルをつかむことができず。渋野は「悔しいです。めっちゃ悔しいけど、これが今の実力。目の前のことに集中して、やるべきことをやろうと思っていたけど、なかなかうまくいかなかったです」と懸命に受け止めた。

 苦しみ抜いた一年だった。メジャーチャンピオンとして迎えた2020年。前年覇者として臨んだ8月のAIG全英女子オープンで予選落ちを喫した。前哨戦も含めて英国では2戦連続で決勝にすら進めず、1年前に人生を変えた思い出の地での2週間を「地獄でした」と表現した。そこから渡米し、約2カ月にわたる海外遠征。少しずつゴルフの状態は上向いていたが、帰国初戦となった樋口久子・三菱電機レディースでも予選落ちを喫した。昨季日米5勝を挙げた22歳が、11月中旬までトップ20入りゼロ。四六時中、頭に浮かぶのはゴルフのことばかり。食事が喉を通らなくなった時期もあった。

 だが、決して戦うことからは逃げなかった。大会会場では、日が沈んでも練習を続ける姿があった。家族や身近な人たちと話しをし、考え方を変えた。「去年の自分に戻りたい」から「また一から作り上げていく」に。ゴルフはメンタルのスポーツと言われる。思考を変えたことで、ゴルフの内容にもいい影響が出てきた。

 11月下旬の大王製紙エリエール・レディースで5位に入ると、続くツアー選手権リコー杯では3位。試合を重ねるごとに、結果もついてきた。そして迎えた、今年最終戦となる今大会。2打差がついた16番パー3では果敢にピンを狙い、最終18番では10メートルのバーディーパットを沈める意地を見せた。確かに、優勝はならなかった。でも、最後まで諦めずに戦い続けた。今季出場した米ツアー7試合でベストの4位。メジャーという大舞台で、価値ある順位だ。

 ホールアウト後、インタビューでこの大会での収穫を問われた渋野は「今年一年を考えると、よく頑張ったかなって思うんですけど…」とまで話すと、言葉を詰まらせた。目を潤ませるその姿に、この一年への思いが表れた。「この悔しい気持ちは、アメリカツアーでないと晴らせない。絶対にここで、また戦いたいと思っています」。世界最高峰の舞台での優勝争い。またこの場所に、戻ってくる。

 ▽全米女子オープン 1946年に第1回大会が開催された現存する女子最古のメジャーで、今年で第75回を迎える。日本勢の最高成績は87年にプレーオフの末に敗れた岡本綾子の2位。今年はテキサス州ヒューストンに位置するチャンピオンズGCが舞台。同コースでは69年に男子の全米オープンが開催されたが、今大会は初開催となった。日没時間の関係で予選はサイプレスクリークCとジャックラビットCの2コースを使用し、決勝はサイプレスクリークCのみで行われた。

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