室伏広治氏とは――震災後も生徒に寄り添い交流続ける心優しき鉄人

[ 2020年9月12日 05:30 ]

11年6月、宮城県石巻市の門脇中で生徒と一緒にストレッチ
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 文部科学省は11日、スポーツ庁長官に2004年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げ金メダリスト室伏広治氏(45)が10月1日付で就任すると発表した。任期満了により9月末で退任する鈴木大地初代長官(53)の後任。新型コロナウイルスの影響で来年に延期された東京五輪・パラリンピックを控える日本のスポーツ行政を担う新たなトップとなる。

 【室伏広治という男】東日本大震災の発生から約3カ月後の11年6月13日、室伏氏は被害が甚大だった宮城県石巻市にいた。門脇中で「一日体育教師」を務め、ストレッチやリレーで生徒と交流。そして、同年8~9月の世界選手権での金メダル獲得を生徒に約束した。普段、順位や数字の目標を公言しない室伏氏にとっては異例のことだった。

 迎えた本番、81メートル24を投じ、有言実行の金メダルを獲得。36歳325日での戴冠は史上最年長だった。「大震災を乗り越えることは長きにわたること。それは、私の年齢で金メダルを獲ることに相当する以上のものだと思った」。当時の生徒には今も年賀状を送るなど交流は続く。鉄の意志と温かいハートで、スポーツ界を明るい未来に導くに違いない。(五輪担当・杉本 亮輔)

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