バッハ氏、安倍首相、森会長ら強行論の事情…延期や中止 言い出しっぺは嫌

[ 2020年3月19日 07:30 ]

IOCのバッハ会長(AP)
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 【記者の目】感染症はどんなに厳重な対策を取っても完全に封じ込めることは難しい。たとえ7月までに表面上は終息したように見えても、いつまた再流行するか分からない。選手たちから予定通りの開催に疑問の声が上がるのも十分理解できる。

 もし延期や中止となればさまざまな契約上のトラブルが生じ、放映権料やスポンサー料、チケットの問題で大混乱に陥るのは必至だ。経済的な打撃も桁外れだろう。だが、開催を強行して万が一、選手や観客に感染者が続出した時のダメージがそれをはるかに上回るのは間違いない。

 今の東京五輪を取り巻く状況は、「責任者不在」もしくは「責任転嫁」という言葉がピッタリのように思えてならない。五輪開催の決定権を有しているのはIOCだけだ。そのIOCのバッハ会長ですら「WHOの勧告に従う」と判断を他人に委ねているのだから、事態が動くはずもない。要は誰も延期や中止の言い出しっぺにはなりたくないということなのだろう。

 IOCが動かないなら他の組織が助言すべきだが、国際競技団体はIOCから莫大(ばくだい)な分配金を受けている。五輪がなければその金は入らず、従って開催に反対する者はいない。組織委はIOCと開催都市の間を調整する組織に過ぎず、森会長が何を言おうとIOCの決定には従わざるを得ない。安倍首相も小池都知事も、五輪開催を自らの実績として国内外にアピールしてきただけに、何が何でも予定通りに開催したい思いが強い。これではどこからも延期や中止の話が出てくるはずがない。

 今すぐ延期や中止を決めなくてもいい。だが、最終判断はいつなのか、その時の選択肢は延期なのか中止なのか。IOCは選手たちの生の声を直接聞いた上で、速やかに道しるべを示すべきである。(編集委員・藤山健二)

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2020年3月19日のニュース