追悼連載~「コービー激動の41年」その11 前代未聞の進路発表会見 全米が注目!
【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】1996年4月。ペンシルベニア州の高校選手権で優勝したあとコービー・ブライアントは高校生を対象にした全米規模のオールスターゲームに2回出場している。全米のトップ20人が集まったデトロイトでの「ラウンドボール・クラシック」では21得点。208センチのジャマール・マグローア(ケンタッキー大でNCAA制覇、その後NBAホーネッツに入団)の上からダンクをたたき込んでファンの期待に応えた。MVPは西軍のフォワード、ティム・トーマス(ビラノバ大から76ersに入団)で、コービーのいた東軍は117―127で敗れたが、集結していたNBAのスカウトたちは「トーマス>ブライアント」という価値判断を修正する必要に迫られた。
NBA入りについては懐疑的な声も多かった。コービーのプレーを見たホーネッツのボブ・バース球団社長(当時)は「彼がプロ入りを表明したらきっとどこかのチームが指名するだろう。でもチームを助けられるようになるまでにどれくらいかかるのだろうか?1シーズンには82試合と100回の練習がある。それに耐えられるとは思えない。だから高校生を指名したくない」と語っていたほど…。おっと、ドラフト前の各チームのフロント陣の言葉を真に受けていはいけない。この一件については「よくもそんなことが言えたもんだ」と思う。なにしろこの年のドラフトでコービーを指名したのはそのホーネッツだ。本音かどうかはわからない。ただしそのコメントはある程度、ブライアントの“立ち位置”を物語っていた。
一方、大学を選択肢にするとかなり志望校はしぼられていた。ブライアント家の総意として最後に残った2校は父ジョーの母校でもある地元フィラデルフィア(ペンシルベニア州)のラサール大と、コーチKことマイク・シャセフスキー監督が率いる名門のデューク大(ノースカロライナ州)。ローワー・メリオン高校のグレグ・ダウナー監督は「ラサールに入るのはフィラデルフィアにとってはいいことかもしれないが、コービー自身の将来を考えるとベストの選択ではない。だからデュークに行くべき。そこが学業的にも社会的にもベストの場所だ」とアドバイスしていた。
NBAか大学か?1人の高校生の進路をめぐる謎解きとその騒動は、1996年4月29日にようやくピリオドが打たれる。緊急会見の会場はローワー・メリオンの体育館。今、そこは「ブライアント体育館」と呼ばれているのだが、そこでコービーがついに結論を出すときがやってきた。会場は異様な雰囲気。スポーツ専門局のESPNのカメラが入り込み、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズの記者たちもいた。
今年1月31日にレイカーズの本拠地ステイプルズセンターではブライアント氏の追悼セレモニーが営まれ、人気ボーカル・グループ「BOYZⅡMEN」が国歌をアカペラで斉唱したのを覚えておいでだろうか?実は彼らもフィラデルフィア出身で今から24年前に「ブライアント体育館」にいたメンバーだった。
高校スポーツ選手の進路表明の会見で、これだけのメディアを集めたのは米国ではあまり例を見ない。おそらく多くの人たちがコービー・ブライアントという少年の未来に、今まで自分たちが経験していなかった新しい興奮と高揚感を期待していたのではないかと思う。
定刻を迎え、新調のスーツに身を包んだコービーが壇上に登場する。マイクに近づいたときに館内は静まりかえった。第一声は「ハーイ、僕はコービー・ブライアントです」。いまさら自己紹介する必要もないのに照れ屋の少年はぎこちないスピーチで場の雰囲気をさらに堅苦しくしてしまった。だがそれがはじけて歓声に包まれるまでにさほど時間はかからなかった。「それで、僕は自分の才能を…」。話は終わっていないのにここで拍手がわき起こり始める。そして一拍置いたあと、ついに決めのセリフが出た。「僕は大学への進学を断念し、自分の才能をNBAで試してみることにしました」。このときの表情を「KOBE」の著者ジョー・レイデン氏は「地球で最も幸せそうだった」と記している。監督や家族と相談して悩みぬいた1カ月。ようやく出した結論にコービーは満足していた。そしてこの日から事実上、彼のNBA人生が始まったのである。
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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