平野裕志朗 アジア人への偏見も「モチベーション」

[ 2019年2月9日 09:01 ]

NHL入りを目指して米国で奮闘する平野裕志朗(C)Wheeling Nailers
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 【NHLに最も近い日本人・平野裕志朗 2】「(米国では)基本的に下に見られている。自分がラフなプレーをしたりすると、“何だこのアジア人”といった感じ。アメリカ人同士が対戦するよりも、“何だこいつは”という気持ちが強いんだと思います」

 米国に限らず、外国のスポーツリーグで日本選手が認められるのは簡単ではない。特に日本人の実績が乏しいアイスホッケーではなおさら。高校卒業と同時に海外に飛び出した平野はそのことを身をもって理解している。“戦場”のような米国のリンクでも、様々な形で厳しい洗礼を味わってきた。

 「プロではあまりなくなりましたけど、3年前にアメリカのジュニアでプレーしていたころは“カミカゼ”“ゲンバク”とか、“ヒロシマ”とかヤジを飛ばされました」

 こんな平野の経験は、NBAの台湾系選手ジェレミー・リン(現アトランタ・ホークス)が大学時代にコート上で“ワンタンスープ”“ニンテンドー”とからかわれたという話を思い出させる。

 厳しいのは相手チームの選手だけではない。新しいチームでプレーを始めると、平野には最初は満足にパスが回ってこないという。そんな場所でできるのは、とにかくプレーでアピールし、結果を出すことだった。

 「1つでもミスをしてしまうと、“やっぱりアジア人はだめだな”とか、そういった印象になってしまう。逆に良いプレーすれば“あのアジア人やるな”となってくる」

 異国では自らの能力で偏見や固定観念を変えていく必要がある。そんな厳しい環境も、平野は「モチベーションになっています」と言い切る。それだけの度量、たくましさと、実際に周囲に認めさせるだけの実力があったからこそ、米国でも頭角を現してこれたのだろう。(杉浦大介通信員)

 ◆平野 裕志朗(ひらの・ゆうしろう)1995年(平7)8月18日生まれ、北海道出身の23歳。白樺学園を経てスウェーデンや米国のジュニアリーグ、アジアリーグ(東北フリーブレイズ)などでプレー。今季からNHLの「3軍」にあたるECHLのネイラーズに所属し、1月中旬に契約した「2軍」のAHL・ペンギンズへの昇格に備えている。2月7日終了時でチーム2位タイの13ゴール、同3位の22アシスト。18歳以下、20歳以下で日本代表に選出され、代表通算28試合で7ゴール9アシスト。1メートル85、100キロ。

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