マラソン五輪選考 男子と女子で基準変えるべき 男子は下限タイム

[ 2016年3月5日 09:00 ]

東京マラソンで日本人トップの8位でゴールした高宮だが、タイムは…

 すっかり4年に1度の風物詩となった五輪マラソンの代表選考問題。女子に関しては前回のコラムで「もっと優勝者を評価するべき」と提言した。なので今回は男子について考えてみたい。あえて「女子に関しては」と断ったのは、男子と女子では選考基準を変えるべきだと思うからだ。

 4年前のロンドン五輪時にはなく、今回から新たに加わった選考基準の一つに派遣設定記録がある。男子は2時間6分30秒、女子は2時間22分30秒で、これらを突破した選手は最優先で代表に選出されることになっている。過去の五輪や世界選手権、近年の世界ランクなどを考慮し「リオ五輪で上位を狙うためにはこのぐらいのタイムが必要」と陸連の専門家が設定したのがこのタイムだ。

 かつてのような強さはないとはいえ、まだかろうじて世界レベルに近い女子は妥当な数字だと思うが、男子はどうか。現在の日本記録は高岡寿成が02年に高速コースのシカゴで出した2時間6分16秒。国内では藤田敦史が福岡国際で2時間6分51秒を出しているが、それはもう16年も前の話で、6分台で走った日本選手はこの2人を含めわずか3人しかいない。

 そんなとんでもないタイムが今の日本の男子選手に出せるはずがないことは誰でも分かる。にもかかわらず男女同じ選考条件にこだわって実現不可能な数字を設定したため、逆に選手たちはタイムよりも順位にこだわるしかなくなった。その結果、先の東京マラソンがどうなったかは周知の通り。真面目に無謀な派遣設定記録を追い求めた一部の若手は早々につぶれ、最初から順位勝負に切り替えた国内の有力選手は超スローペースに陥り、日本人1位が2時間10分57秒というていたらくに終わった。この史上まれに見る凡レースの責任は選手よりもむしろ、実現不可能な無謀な派遣記録を設定した陸連の方にある。

 今の男子に目標となるタイムを設定するなら2時間6分などという到底不可能な数字ではなく、2時間8分なり9分なりの最低ライン、つまり「最低でもこのタイムを切らないと選考対象にはなりませんよ」という下限の目標を提示すべきだ。世界記録が2時間2分台の今、テレビでアナウンサーが絶叫する「サブテン」(2時間10分以内)などは何の価値もない。もし今回、下限の目標を現実的な2時間8分台に設定していれば福岡も東京もまったく違うレース展開になっていたのは間違いない。

 女子は期待の意味も込めて上限の目標、男子は現実的に下限の目標を設定すべきというのが私なりの意見である。今の男子マラソンのレベルを考えれば、びわ湖毎日の結果次第では3人の代表枠返上もやむなしだろう。そのぐらいの荒療治をしない限り、男子マラソンの復活は永久にありえない。(藤山 健二)

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2016年3月5日のニュース