白でも青でもないがモンゴルだ!母の前で日馬初V

[ 2009年5月25日 06:00 ]

初優勝の日馬富士は安壮富士(左)と共にオープンカーの上から沿道のファンの祝福に手を振って応える

 大相撲夏場所千秋楽は24日、東京都墨田区の両国国技館で行われ、幕内最軽量126キロの大関・日馬富士(25=伊勢ケ浜部屋)が涙の初優勝を飾った。琴欧洲を破り、1敗で並んだ横綱・白鵬(24=宮城野部屋)との優勝決定戦は下手投げで制し、大関3場所目で初めて賜杯を獲得。母ミャグマルスレンさん(51)の前で最高の親孝行を果たした。幕内で最も軽い力士の優勝は若浪、千代の富士に次いで史上3度目の快挙。青白時代に風穴をあけたモンゴル第3の男は、名古屋場所(7月12日初日、愛知県体育館)で綱獲りを目指す。

 29キロの優勝賜杯を初めて手にした瞬間、126キロの体内に何とも言えない“重さ”が伝わった。歓喜の表彰式。日馬富士は「応援してくれる人の期待に応えることができた」と語り、升席で見守る最愛の人に視線を送った。母ミャグマルスレンさんは夏場所前に来日し、モンゴル風うどんなど手料理で大関を支えてきた。最高の親孝行を果たした大関は「きょうの一番のことだけを考えて、最後まで自分の相撲を取ろうと思った。父と母、親方とおかみさん、ファンの皆さんのおかげです」と笑みを浮かべた。
 4人が優勝の可能性を残した千秋楽。1敗の日馬富士は琴欧洲を首投げで下し、白鵬との決定戦。場所前にはゴルフ騒動で物議を醸したが、最後はモンゴル出身力士同士の頂上決戦となった。
 出番前の西の支度部屋では3敗で脱落した朝青龍に「四つになるな。頭をつけろ」とアドバイスされて出陣。立ち合い、迷わず飛び込んで左を差し込んだ。相手を半身にさせながら、左手にこん身の力を込めて投げを打つ。バランスを崩して前のめりになった白鵬が視界に入ると、無数の座布団が乱舞した。入門9年目での初優勝。「もう…、うれしいです」と言葉を詰まらせた。
 幕内の平均体重が150キロを超える中で126キロは最も軽い。1953年に力士の体重が公表されて以降、最軽量力士が賜杯を抱くのは史上3人目の快挙。今年初場所で大関に昇進したものの「大きな相撲を取ってしまった」とスピードを生かした本来の相撲を忘れていた。だが、10勝に終わった春場所後、基礎トレーニングの重要さを再認識。しこ、てっぽうに加え、20キロの砂袋を使ったすり足などで徹底的に下半身を強化し、本来のスピードを取り戻した。
 大関昇進を決めた昨年12月、06年12月に交通事故で急逝した父ダワニャムさん(享年50)の墓前で優勝を約束したという。亡き父との約束を守った男の次なるターゲットは「綱獲り」。優勝前の2場所が8、10勝止まりで「内容」を重視する声も出る中「1日に努力できることを一生懸命やって自分の相撲を取るだけ」と目を輝かせた。1909年(明42)6月に国技館が開設して100年。節目の場所で、97人目の優勝力士が新たなる時代の到来を宣言した。

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2009年5月25日のニュース