白鵬が黒星発進、屈辱“太刀持ち”に屈する

[ 2008年11月10日 06:00 ]

安美錦に下手投げで敗れた白鵬(左)

 【大相撲九州場所初日】横綱負けて、座布団舞わず――。大相撲九州場所は9日、福岡国際センターで初日を迎えた。3場所連続9度目の優勝を狙う横綱・白鵬が黒星発進した。自らの太刀持ちを務める安美錦に痛恨の下手投げを食って逆転負け。今場所から導入された“飛ばない座布団”がいきなり効果を発揮する皮肉な幕開けとなった。大関獲りの関脇・安馬は、立ち合いが4度のやり直しとなったが、苦手の琴奨菊を下手投げで退けた。

 荒い息を整えながら、白鵬が仕切り線で礼をした。右ほおにできたすり傷が、赤く光を放って痛々しい。右半身は文字通り土にまみれた。1人横綱がまさかの黒星発進。しかし、館内の光景がいつもと違う。客席の紫色の座布団が宙を舞うことはなかった。
 「投げの打ち合いになったとき、(相手が)食ったと思って体を預けた。顔は大丈夫です。(2日目から)吹っ切れてできればね」
 “飛ばない座布団”の効果を初日早々、証明してしまった白鵬は淡々と振り返った。立ち合い、左の張り差しから右をねじ込もうとしたが、果たせない。右からはたくと相手を呼び込んでしまった。苦し紛れに左小手投げを打って土俵を半周。最後は下手投げを返されて土俵にはった。
 横綱にとっては屈辱の座布団投げだが、起源はひいきの力士を称えて羽織などを投げる「投げ纏頭(なげはな)」と呼ばれる儀式だった。近年は座布団が取って代わったが、危険防止のため相撲協会は正方形の1人用だったものを、今場所は長方形の2人用に変更。投げられないように重さが4・8キロもある座布団で対策をとった。
 武蔵川理事長は「飛ばなかったねえ」と満足げだったが、初日早々の波乱では心中も複雑だ。白鵬も朝青龍の休場による1人横綱の重圧かと問われると「そういう意識より、太刀持ちだ」と吐き捨てた。同じ立浪一門で横綱土俵入りで太刀持ちに従える安美錦に屈した悔しさを隠せなかった。自身2度目の3連覇で締めたい1年納めの場所。もう“飛ばない座布団”の効果まで再証明するつもりはない。

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2008年11月10日のニュース