【槙野智章観戦記】逆境だからこそ…麻也のまとめる力に期待

FIFAワールドカップ（W杯）カタール大会1次リーグE組   日本0―1コスタリカ （ 2022年11月27日    A・ビン・アリ競技場 ）

まとめる力に期待が懸かる吉田（撮影・西海健太郎）
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　【槙野智章　ピッチサイド】コスタリカ戦は悔しい結果になりました。ドイツ戦と違いボールは保持していたけど、引いた相手の前で動かしているだけでリスクを冒すようなパスやドリブルが少なかった。コスタリカは怖くなかったと思います。

　失点するまでDF陣の出来は良かったと思います。カウンターに対するリスク管理、コミュニケーション、ライン設定も良かった。DFは一つのミス、失点で評価が変わるのでもったいないですね。

　失点の場面での、吉田選手のプレーが批判されています。つなぐのではなくクリアすべきだったと。恐らく強豪国相手ならセーフティーにクリアしていたと思います。相手がコスタリカだから、プレスが激しくないから、ボールを保持するためつなごうとしたのですが、問題はそれをやるべき場所、時間帯だったか。そして、やるからにはやり切らなければいけなかった。W杯では小さなミスが敗戦につながるのです。

　ドイツ戦後のお祭り騒ぎから一転、日本代表に対する批判的なコメントが多くなっています。ロシア大会のポーランド戦後とよく似ていると思います。

　僕も出場したポーランド戦の終盤、日本は負けているにもかかわらず攻撃せずにDFラインでパスを回して時間稼ぎをしました。決勝トーナメントに進出するための策でしたが、そのプレーが批判されました。

　あの時は長谷部主将を中心に選手ミーティングを開きました。いろんな意見が出ましたが、最終的には「ベルギー戦で結果を出して見返そう。もう一度（ファンの気持ちを）つかみ取りに行こう」と一致しました。4年前も1勝1分け1敗で勝ち上がりました。ロシアで戦った選手たちには、当時の経験を初めて出る選手に伝えてあげてほしいと思います。

　スペインはチーム戦術が明確な完成度の高いチームです。攻撃が注目されがちだけど、守備の強度も高い。日本が勝つためのポイントは団結、チームワークだと思います。攻める時間は少ないと思いますが、いら立ってバラバラになると厳しい展開になる。苦しい状況でいかに一つにまとまるかが重要です。

　そういう意味で吉田主将に期待しています。吉田選手は次に起こることを想定して準備している賢いDFです。僕より年下ですが、コンビを組んだ時にはリードしてくれました。引っ張る力、まとめる力、盛り上げる力、どれをとっても最高の主将です。そして自分の意見を持っていて積極的に発言し、言葉で人やチームを動かせる人間です。敗戦の責任を感じているかもしれないけど、間違いなく逆境を力に変えられる選手だと思っています。（W杯ロシア大会日本代表、神戸DF）