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日本代表GK中村 うまくなりたい一心で…W杯で刻む確かな成長

[ 2018年7月1日 11:30 ]

練習で笑顔を見せる日本代表GK中村
Photo By スポニチ

 黙々と、ただ黙々と。全治約2週間の負傷から全体練習に復帰した4月15日、柏のGK中村航輔は雨の中で一人だけ居残ってシュートを受け続けた。付き合ったのは井上敬太GKコーチ。幾度も中村の顔にボールが当たったが、意に介さず納得するまで特訓は続けられた。

 柏の下部組織時代にも指導している井上コーチは「近くから顔にシュートを受けてしまったから、平気かなと心配していたら、特に気にせずにブツブツと何か言いながら反省している。それを見て、改めて遠慮なんていらないなって思いましたよ」と苦笑。そして「勝利と自分の成長にしか興味がないんじゃないですかね。でも努力って言葉は似合わない。うまくなりたい一心でやってるから、航輔にとっては努力じゃなくて当たり前なんです」と笑顔で教え子について語ってくれた。

 中村はプライベートでは将棋と人気ロックバンド「ONE OK ROCK」を好む。そんな普通の23歳は、多くの期待を背負ってロシアの地にいる。メンバー23人に選ばれた際には「レイソルを代表することになるので、ファンやサポーターの思いも背負ってロシアで戦いたい」と責任感あふれるコメントをしていた。

 W杯直前には危機もあった。5月20日に行われたリーグ名古屋戦で頭から落下。脳振とうおよび頸椎(けいつい)捻挫と診断され、代表合宿への合流も危ぶまれた「運が良かった。豊田スタジアムのドクター、グランパスの関係者、レイソルのスタッフ、病院の方々のおかげ」。24日には元気な姿を見せて、周囲を安心させた。

 1次リーグを終えて、本番のピッチには立てていない。目の前には川島永嗣、東口順昭という大きな壁がある。それでも「高い壁を越えた時に見える景色は素晴らしく、それを見られるかは自分次第だと思っている。W杯でプレーしたい気持ちは変わっていないし、大会中も争いはありますから」と諦めない。

 何があっても折れず、むしろリバウンドメンタリティーによって成長してきた。この先にどんな結末が待っていようとも、出国前と帰国後の中村は違って見えるはずだ。(古田土 恵介)

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2018年7月1日のニュース