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あん馬スペシャリスト 圧倒的な演技

[ 2008年8月7日 06:00 ]

アテネ五輪で優勝した日本チーム・鹿島のあん馬

 転機は秋風とともにやってきた。「いつもあっけらかんとしている」と鹿島が評す愛妻の一言が、折れた心に染みた。夕食のメニューは忘れてしまっても、「思うようにやったらいいやん」という彼女の“金言”は忘れるわけがない。「そうやなあ。この先、そんなに長く体操をできるわけじゃないしなあって思ったんです」。07年10月の北京五輪1次選考会への出場は不可能だったが、実績が考慮され協会推薦で08年4月の2次選考会への進出は決まっていた。

 「考えることは考えたし、グダグダしてても時間がもったいない。北京に挑戦するチャンスは、まだ残っている。それに懸ける」
 年明けから本格的に練習を再開。2次選考会で復帰した“あん馬のスペシャリスト”は、以前と変わらぬ圧倒的な演技を披露する。股下86センチの長い脚を生かした美しい旋回に観客はどよめき、感嘆のため息を漏らした。2次選考会とNHK杯の4日間、あん馬はすべて他を寄せ付けなかった。塚原、米田らアテネの戦友が落選する中、再び五輪の舞台に帰ってきた。
 左手甲骨折の手術を受けた際、鹿島は痛めていた薬指にもメスを入れている。手術で太くなり、曲がってしまった薬指には、結婚当初はしていた指輪はもう入らない。かつて絶望のまなざしで見つめた指輪のない左手だが、今は“感謝のリング”がはっきり見える。

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2008年8月7日のニュース