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畳の上の上杉謙信に「僕は負けるはずがない」

[ 2008年8月7日 06:00 ]

石井慧が肉体を披露する

 清風中入学を決意した小学5年からは毎日塾に通い、週末は「朝9時から夜11時まで塾。弁当も2回、塾に運んだ」(父・義彦さん)という生活。当時と変わらない、執着心にも似た集中力が石井にはあった。上杉謙信を知りたい。練習後は海音寺潮五郎の「天と地と」をむさぼり読んだ。合戦の強さと仏教への帰依、情に厚い姿が心を打った。苦しみから救われる気がした。

 「僕の考える謙信の凄さは3つある。まず人望。豪族たちは味方してくれたし、豪族を助けるために敵兵5万人の真ん中を、堂々と歩いた。2つ目はライバルの武田信玄が死んだときに泣いた情。3つ目は、強かったのに朝廷や幕府を尊重して、私利私欲で戦わなかったことですね」
 岩渕監督は、こう解説する。「2年、3年と、よう練習した。毎日夜になると後輩を連れてウエート。“上半身ばっかりだな”と言うと、朝5時から走っていた。才能がないから練習しなきゃ勝てない、不安の表れだよ。それが時々、周囲には自分勝手と映る。だから“おまえをサポートしてくれる後輩に、もっと優しく”と言ったんだ。謙信の生まれ変わりなんかじゃなくて、謙信みたいな男になりたいでしょ」
 昨年9月の100キロ超級への転向後、不敗で北京五輪代表にたどり着いた姿は、生涯70戦あまりで2敗という“軍神”謙信の姿にどこか重なってきた。「自分のためだと妥協してしまうけど、僕のために頑張ってくれる付き人のためなら妥協しない。僕は、負けるはずがない。謙信の生まれ変わりですからね」。荒唐無稽と笑う人間に新しい歴史はつくれない。それは謙信が生きた戦国時代が証明している。

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2008年8月7日のニュース