【有馬記念】アーモンド ガラスの蹄を変えた“靴”の試行錯誤

[ 2019年12月19日 05:30 ]

アーモンドアイ7冠へ「ONE TEAM」

アーモンドアイが今春まで着用した「4分の3蹄鉄」(下)とノーマル蹄鉄
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 朝の調教が終わると、国枝厩舎からカチン、カチンという金属音が聞こえてくる。アルミ合金の蹄鉄をハンマーで叩く装蹄作業。「ようやく普通の蹄鉄を着けられるようになりました」。親方と呼ばれる開業装蹄師の牛丸広伸氏(44)はアーモンドアイの蹄鉄を打ち終えると笑った。

 蹄なければ馬なしというが、全力疾走すると蹄1つに1・5トンもの重荷がかかる競走馬にとって装蹄の役割は大きい。特にアーモンドアイのように蹄のトラブルを抱えた馬にとっては命綱だ。国枝師の依頼で新たな蹄鉄を模索したのは牝馬3冠が懸かった秋華賞前だった。「馬は自分の脚をぶつけないものですが、この馬は3歳時からマックスまでトモ(後肢)を踏み込むため前肢の蹄と追突して傷めてしまう」(牛丸氏)。踏み込んだ後肢は長い方の前肢にぶつかる。左前肢より長い右前肢の蹄には3歳春から保護材を着用していたが、3歳夏を越えてさらにパワーアップした後肢が右前肢の蹄を出血するほど傷めつけていた。

 3冠獲りのゲートに無事入れる蹄鉄を生み出せるか。牛丸親方は夜も眠れずに試作を重ねた。衝撃を吸収させるゴム素材などを用いるなどした牛丸オリジナルが完成。この蹄鉄で京都競馬場に向かう前には右前蹄の出血も止まっていた。その後のレースでは内側の鉄の部分を1/4削減して負担を軽くした「4分の3蹄鉄」を装着してきたが、この有馬記念で普通の蹄鉄に戻した。

 「後肢とぶつかる頻度が減ったため前肢の蹄が傷まなくなったんです。発展途上だった骨格と筋肉が完成され、ぶつからない体の使い方ができるのでしょう」。蹄鉄の変化が示すのは女傑の進化。「これまで以上のパフォーマンスを見せられるかもしれません」と牛丸親方は再び笑った。 

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2019年12月19日のニュース