エリック・クラプトン 2021年の「いとしのレイラ」の7音

[ 2021年11月17日 09:00 ]

エリック・クラプトンのDVD+CD「レディ・イン・ザ・バルコニー:ロックダウン・セッションズ」のジャケット
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 【牧 元一の孤人焦点】エリック・クラプトン(76)の「いとしのレイラ」は、1970年、ロックバンド「デレク・アンド・ザ・ドミノス」時代に発売したアルバムのタイトル曲だ。クラプトンの代表曲のひとつで、そのギター・リフはロックファンの間で広く知られている。

 この曲には逸話がある。クラプトンは親友だったジョージ・ハリスンの妻パティ・ボイドに恋をし、その恋心と苦悩を「いとしのレイラ」に託して歌ったとされる。パティはのちにジョージと離婚し、クラプトンと結婚(のちに離婚)した。また、ギター・リフの最初の7音はアルバート・キングの「As the Years Go Passing By」の歌のメロディーから取り入れたとされる。ここまではクラプトンに詳しい人ならば周知の事柄だ。

 今月12日に発売されたDVD+CD「レディ・イン・ザ・バルコニー:ロックダウン・セッションズ」には、アコースティックで演奏された「いとしのレイラ」が収められている。アコースティック版の同曲としては、1992年発売のアルバム「アンプラグド」での演奏が、グラミー賞最優秀ロック楽曲賞を受賞するなどして有名だが、それとはアレンジが異なる。

 約30年前のアンプラグド版では、オリジナルのリフが用いられなかった。しかし、今作では、終盤のギター・ソロで、あの7音を聞くことができる。1970年当時のクラプトンの恋心と苦悩が込められていたはずの7音。それが消えたアンプラグド版からは、クラプトンが年を経て枯れた印象を受けたが、今作では、年を経てもまだ体内にかすかに残る炎を感じた。後者の方が、艶っぽく、心を揺さぶる。

 今作は、5月に予定していたロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートがコロナ禍で中止になったことを受け、ウェスト・サセックス州のカウドレイ・ハウスで行った無観客ライブを収録したものだ。

 メンバーは、クラプトンのほか、ネイザン・イースト(ベース、ボーカル)、スティーヴ・ガッド(ドラム)、クリス・スティントン(キーボード)。この4人で、「いとしのレイラ」のほか、「アフター・ミッドナイト」「ベル・ボトム・ブルース」「ティアーズ・イン・ヘヴン」などを演奏している。

 「レディ・イン・ザ・バルコニー」というタイトルは、クラプトンの妻のメリアさんが収録時、建物内のバルコニーからライブを見守っていたことに起因している。

 DVD(またはBlu-ray)で、演奏をじっくり見られるところが良い。このライブでクラプトンはアコースティックギターだけではなく、エレキギターも弾くが、終始、ピックを使わない。指による演奏でも、生まれる音は太く明確だ。最近のライブを振り返ると、2019年に出演した「クロスロード・ギター・フェスティバル」では、エレキを弾く時にはピックを使い、アコギでも曲によってはピックを使っていたので、無観客ライブに向けた音作りの特徴と言えるだろう。

 ピックを使わないギタリストと言えば、ジェフ・ベックを思い出す。1970年代、クラプトン、ベック、そして、ジミー・ペイジは「3大ギタリスト」と称されていた。これは余談。

 「いとしのレイラ」とともに特に気に入ったのは、9曲目の「リヴァー・オブ・ティアーズ」だ。1998年のアルバム「ピルグリム」に収録されたバラードだが、哀愁を帯びたメロディーがアコギの温かい音色で表現され、聴いていて胸が熱くなる。静寂な無観客ライブならではの繊細さが、そこにある。
 
 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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