カーネルおじさんと五代目志ん生の遅咲き人生、そしてトリは辻萬長さん

[ 2021年9月17日 14:16 ]

俳優の辻萬長さん
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】北海道の実家そばにケンタッキーフライドチキンの店がある。わけもなく無性に食べたくなる時があるが、いったいなぜだろう。テレビを見ていて女優の高畑充希(29)から「きょう、ケンタッキーにしない?」なんて背中を押されると、もう我慢出来ない。刷り込まれてしまっているようだ。

 「カーネルおじさん」の愛称でも知られる創業者のカーネル・サンダースさん。1980年12月に90歳で生涯を閉じているが、若い頃から苦労人だったようだ。ずいぶん前に読んだコミックス「めしばな刑事(デカ)」(原作・坂戸佐兵衛、作画・旅井とり、徳間書店)第1巻でも取り上げられており、それでざっくり“学習”した覚えがある。実業家として何度か大きな挫折も経験している。

 圧力釜を使ったフライドチキンを開発したのは50歳近くなってから。その後も紆余曲折を繰り返し、オリジナルレシピを武器にフランチャイズ化に成功するのは66歳の時だった。遅咲きのビジネスマン人生と言っていいが、現在は世界中の約2万店舗の入口でカーネル像がお客さんを迎えている。

 1890年9月9日にインディアナ州で産声をあげた。日本は明治23年。同じ年の6月に落語家の五代目古今亭志ん生が生まれている。八代目桂文楽、六代目三遊亭円生とともに「昭和の名人」と呼ばれる天衣無縫の噺家だ。借金取りから逃げるため?16回も改名し、志ん生の五代目を襲名したのが49歳の時。この人も遅咲きだった。

 酒を愛し、酔って上がった高座で舟をこぐこともあったそうだが、ファンが許したというから恐れ入る。CDがロングセラーになっており、「火えん太鼓」「黄金餅」「唐茄子屋政談」といった十八番はもとより、「二階ぞめき」「鮑のし」「妾馬(めかうま)」などの演目も何度聞いても飽きない。東京・千駄木にある「稲毛屋」の親子丼が好物だったと伝わる。真ん中に卵の黄身を乗せてうまそうに食べたそうだ。1973年に83歳で永眠。9月21日が命日だ。日米、チキンつながりの一席―。

 さて、当コラムの鶏ならぬトリは辻萬長(つじ・かずなが)さんに登場願おう。井上ひさしさんに「円生と志ん生」という作品がある。太平洋戦争末期、満州の大連に慰問に出掛けた三遊亭円生と古今亭志ん生の命懸けの珍道中を描いたもので、こまつ座でたびたび舞台化されている。

 05年と07年、志ん生役の角野卓造(73)とのコンビで円生を演じたのが辻さん。腎盂がんのため8月18日に77年の生涯を閉じた。井上さんが絶大な信頼を寄せた名優だった。2022年放送予定のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に伊東祐親役でキャスティングされていたが、病気を理由に降板していた。「犬神家の一族」(76年)「悪魔の手毬唄」「獄門島」(いずれも77年)と市川崑監督が手掛けた金田一耕助シリーズの刑事役も忘れがたい。合掌。

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