天才キラー・豊島竜王、藤井2冠に6戦全勝 激闘171手大逆転勝ち

[ 2020年10月6日 05:30 ]

第70期王将戦 挑戦者決定リーグ

藤井2冠に大逆転で勝利した豊島竜王(撮影・坂田 高浩)
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 将棋の第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で渡辺明王将(36)=名人、棋王含め3冠=の対戦相手を決める挑戦者決定リーグが5日、大阪市の関西将棋会館で行われ、豊島将之竜王(30)=叡王と2冠=が、藤井聡太2冠(18)=王位と棋聖=に171手で大逆転勝ちした。

 1メートル66、53キロの小柄な体躯(たいく)がひたすら巨大に見える。その剛腕が天才棋士を力任せにつり上げ、土俵外に投げ落とした。激戦の果てにもかかわらず豊島は呼吸ひとつ乱さない。「途中から自信のない展開。最後は寄せられたら仕方ないと思っていた」と半ば開き直ってからの逆転劇。竜王・叡王の2冠はダテではない。

 互いに飛車先の歩を突き合う相掛かりからの静かな序盤。過去5戦全勝の相手、しかしながら先行するすべが見つからない。攻めのきっかけすらつかめず突入した50手目で成桂を取らせ、51手目に▲7七桂とあえて跳ねる。8八銀と6八王の両取りとなる桂の割り打ちを誘って勝負に出た。だがその甘い誘惑に藤井は乗ってこない。肩すかしの指し回し。気がつけば成香2枚と金、銀で構成された重量攻撃で自王が追い込まれ、絶体絶命のピンチに追い込まれていた。

 コロナ下の対局でマスクを途中で外した棋士は、敗戦を悟ると投了の発声に備えて再装着する。ところが、豊島は微動だにしない。藤井の指したわずかな緩手を見逃さず、自王のか細い脱出口を見つけ出す。103手目の▲2七王、119手目の▲同王。「後手の攻めが落ち着いて、(自分が)正確に指せれば」という状態まで押し返した。

 1分将棋とあって必ずしも最善手を継続はできなかったが、必死に受けた結果が右辺中央部に馬・金・桂・桂で囲まれた堅城の完成。藤井の攻め手を切らせてからの逆襲は迫力十分だった。

 これで6戦6勝の“藤井キラー”。「成長されている方なので、これからは厳しくなっていくと思う」と慎重な弁なのは史上最年少2冠へのリスペクトだろう。挑決リーグ2連勝スタートには「次もしっかり集中して臨みたい」。9、10日の竜王戦を挟み、15日には前期挑戦者・広瀬章人八段(33)との戦いが控えている。

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