ドラマ「恐怖新聞」 黒木瞳のホラー愛で怖さ増幅

[ 2020年9月30日 12:30 ]

ドラマ「恐怖新聞」で主人公の母親を演じる黒木瞳(C)東海テレビ
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 【牧 元一の孤人焦点】フジテレビ系の連続ドラマ「恐怖新聞」(土曜後11・40、東海テレビ制作)の黒木瞳が怖い。おどろおどろしさではなく、静かな怖さだ。

 黒木が演じているのは、主人公の女子大生(白石聖)の母親。9月5日放送の第2話で、無残死した夫の遺骨を食べるシーンがあった。無表情で空を見つめ、まるで、せんべいでも食べているかのよう。しかし、それより怖かったのは、暗い部屋で1人、ボールペンをカチカチと鳴らすシーンだ。手元のメモ帳は何かを書き続けて真っ黒。ここでも無表情で、それが派手な表情の変化より効果的だった。

 このドラマの演出は大ヒットホラー映画「リング」(1998年)などで知られる中田秀夫監督。黒木とは映画「仄暗い水の底から」(2002年)「怪談」(07年)「終わった人」(18年)に続く仕事となった。黒木はこう振り返る。

 「中田監督から『クセを何か考えて』と言われ、いくつか考えた中のひとつが、ボールペンをカチカチやるクセ。あの音は、不快に聞こえがちで、私自身も苦手だった。加えて、私が子どもの頃、嫌なことがあるとその内容を書いてストレスを解消していた話をした。1カ所に書き続けると文字が重なって、他の人には何を書いているか分からない。それが採用になった」

 黒木はもともとホラー好き。台湾映画「幽幻道士(キョンシーズ)」(86年)や米国映画「チャイルド・プレイ」(88年)「スクリーム」(96年)を見て、映像表現の可能性の高さを感じたのだという。

 黒木は「ホラーの面白さは何でもありなところで、フィクションの中でも究極のフィクション。私はホラーを見ると笑う。笑いながら見ると楽しみが倍になる。恐怖と笑いは表裏一体なのではと思う。笑いながら怖がる。怖がりながら笑う。そうやって、非現実の世界に迷い込んでいく楽しみがホラーにはある。私は現場でもなるべく笑うようにしている」と語る。

 笑いながらホラーに取り組む黒木の姿を想像すると、それも怖い。いずれにせよ、「恐怖新聞」を見ていると、ホラー愛があるがゆえの表現の巧みさを感じる。

 9月26日放送の第5話は、恐怖新聞の起源が江戸時代にあったというエピソード。何より突然ドラマが時代劇になるのが斬新だったが、最後に母(黒木)が娘(白石)を包丁で刺して「貧乏が悪いんだよ。金がないと暮らしていけないもの」と冷ややかに言い放つ。これは幽霊の恐怖ではなく人間そのものの恐怖だ。

 ドラマは全7話で、残すところあと2話。黒木の怖さがどこまで増幅するのか楽しみだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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