藤井聡太七段 タイトル戦無敵3連勝 木村王位との30歳差対決先勝「いいスタートが切れた」

[ 2020年7月3日 05:30 ]

王位戦七番勝負の第1局に勝利し記者会見に臨んだ藤井聡太七段(撮影・後藤 大輝)
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 将棋の藤井聡太七段(17)が2日、故郷の愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」で第61期王位戦7番勝負第1局2日目の対局に臨み「千駄ケ谷の受け師」の異名を持つ木村一基王位(47)に95手で勝利し、7番勝負初勝利を挙げた。第91期棋聖戦5番勝負でも連勝発進しタイトル戦で3連勝。藤井は棋界初の現役高校生タイトルホルダーへ前進した。

 対局再開時の駒割りは互角だった。2日目朝から肉を切らせて骨を断つ藤井の猛攻が始まった。

 1日目封じ手前、木村が放った「遠見の角」による飛車取りを甘受し、桂も捨て、王手をかけた角も失った。大駒2枚を渡し一手誤れば逆転負けもある、薄氷の終盤戦。しかも相手は「千駄ケ谷の受け師」の異名がある守備の強い木村。矛と盾。お互いの強みが盤上で激突した。

 39手目以降終局まで続く、連続攻撃の合間に放たれた木村の反撃。馬が金取りで背後から接近してきたが、17歳は熟慮60分の末、さらに王手と踏み込んだ。寄せへ再加速し、木村を投了へ追い込んだ。

 「いいスタートが切れた。結果については意識せず、反省を次に生かせたらと思う」

 戦前楽しみにしていた自己最長、持ち時間8時間の2日制。「充実感はあった」とした一方で、「体力面で課題が残ったかなと思う」。

 2日目には最も重視する「形勢判断のバランスを欠いてしまったところがあった。間違えて、攻めが細くなってしまった」。成果と課題を直視し、次なる戦いへと視線を移した。

 屋敷伸之九段が持つタイトル戦出場最年少記録17歳10カ月24日を先月8日の棋聖戦第1局で4日更新した。次なる焦点は、タイトル獲得最年少記録(18歳6カ月)のゆくえ。19日が誕生日の藤井がそれまでに棋聖位を奪えば17歳11カ月での達成となる。

 1972年1月18日生まれの屋敷は棋聖位を獲得時、すでに卒業して高校生ではなかった。高校3年の藤井が棋聖戦、王位戦のいずれかでもタイトルを奪取すれば初の現役高校生タイトルホルダーとなる。

 データも後押しする。棋聖戦第1、2局に連勝した棋士は過去90期で49人。うち41人がその後3連敗することなくタイトルを獲得した。勝率・837。また、王位戦で第1局を取った棋士がそのままシリーズも制したのは過去60期中43期。勝率・717。棋聖戦の2勝に続くタイトル戦3連勝で、戴冠への機運は高まっている。

 棋界では奨励会を卒業してプロである四段に昇段すれば「先生」と敬称で呼ばれる。10代でも、現役最年長棋士・桐山清澄九段(72)でも同様だが、さらにタイトルホルダーには「王位」「棋聖」といったタイトル名そのものが使われる。13、14日に札幌で行われる第2局では「棋聖」と呼び名が変わっているのか。高校生棋士はまた一歩階段を上ろうとしている。(筒崎 嘉一)

 ▽王位戦 1960年に創設された将棋8タイトル戦の一つ。シードと予選通過者計12人が6人ずつ紅・白組に分かれてリーグ戦を戦い、各組1位が挑戦者決定戦を戦う。勝者が7~9月に保持者と2日制、持ち時間各8時間の7番勝負に臨む。永世保持者は故大山康晴15世名人と中原誠16世名人、有資格者は18期の最多記録を持つ羽生善治九段。

 《高見七段は4連勝で叡王》〇…タイトル戦初挑戦で3連勝したのは2017年叡王戦の高見泰地七段(26)以来。高見七段は4連勝で初代叡王となった。ほかに1998年竜王戦での藤井猛九段(49)、1983年名人戦での谷川浩司九段(58)らがいる。藤井七段はダブルタイトル戦のため、掛け持ちでの3連勝だが、タイトル戦初挑戦をダブルで戦うのは1992年の郷田真隆九段(49)以来。郷田九段の相手はともに谷川九段。先に始まった棋聖戦は初戦をとったが1勝3敗、王位戦は3連勝から4勝2敗で初タイトル獲得となった。

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