アキラめない

[ 2020年3月30日 08:00 ]

 【我満晴朗 こう見えても新人類】将棋の第69期大阪王将杯王将戦7番勝負が3月26日に終わった。前期は挑戦者の渡辺明2冠が久保利明王将(肩書・段位はすべて当時)に4戦4勝し、2月でシリーズ終了。対照的に今期はフルセットまでもつれ込む大接戦となり、幕を閉じたのは4月直前だ。熱闘を展開した渡辺王将、広瀬章人八段の奮戦に敬意を表したい。

 さて、このフルセット、つまり4勝3敗での決着――王将戦では過去にいくつあったのだろう。

 ご存じの通り創生期は「指し込み制」を採用していたため、現在一般的に知られているタイトル戦とは異なる様相を呈していた。そこで勝手ながら指し込み制を廃止した第15期(1965年度)以降に絞って調べてみると、いきなりその第15期が該当しているではないか。カードは大山康晴王将―山田道美八段。星取りは…

 大山 ●○●●○○○
 山田 ○●○○●●●

 なんと大山王将、1勝3敗の大ピンチから3連勝しての防衛だ。

 以降、フルセットは今期を含め計13回を記録している。

 第20期 大山康晴王将―中原 誠十段
 第21期 大山康晴王将―有吉道夫八段 
 第24期 中原 誠王将―米長邦雄八段
 第31期 大山康晴王将―中原 誠名人
 第37期 南 芳一棋聖―中村 修王将
 第39期 米長邦雄九段―南 芳一王将
 第55期 羽生善治王将―佐藤康光棋聖
 第56期 羽生善治王将―佐藤康光棋聖
 第58期 羽生善治王将―深浦康市王位
 第63期 渡辺 明王将―羽生善治3冠
 第64期 郷田真隆九段―渡辺 明王将
 第69期 渡辺 明王将―広瀬章人八段

 多少誇張して言うならば、ここに登場する棋士だけで王将戦の歴史を語れそう。

 ちなみにこの13シリーズ中、防衛10に対し奪取は3。つまりタイトルホルダー側が圧倒的に有利と言える。今回の渡辺王将もそうだった。

 さらに細かく調べると、カド番に立たされながらひっくり返したのは約半数の7回。前述の第15期をはじめ、大山王将は第31期でも1勝3敗から生還している。同じケースはその後、米長九段が第39期に記録して以来、一度もない。絶体絶命の状況から死力を尽くして体を入れ替えた両者の底力が、一見無味乾燥な数字からも感じ取れる。

 今期の渡辺王将は2勝3敗からの栄冠だった。それでも「カド番の時は苦しかった」と明かしている。「ちょっと休みたい」という実直なコメントに触れ、ただただ頭が下がる思いだ。

 豊島将之名人と対決する名人戦7番勝負は4月8日開幕。新たな名勝負が重苦しい閉塞感を吹き飛ばす、そんな予感がする。(専門委員)

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