三上博史が語る原点・トレンディードラマ・未来 母の遺言で人生変えた「性格俳優になっちゃダメ」

[ 2019年6月22日 16:00 ]

三上博史インタビュー(下)

日曜劇場初出演となった「集団左遷!!」で圧倒的な存在感を放っている三上博史(C)TBS
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 変幻自在の演技で視聴者や観客を魅了してやまない俳優の三上博史(56)。23日に最終回を迎えるTBS日曜劇場「集団左遷!!」(日曜後9・00)は主人公の“最大の敵”として圧倒的な存在感を放っている。“エリートサラリーマン”を目指していた少年は、ふとしたことから芝居の虜に。母親の遺言から“メジャー”なテレビドラマの世界に入り「トレンディードラマの代名詞的存在」になった。15歳の俳優デビューから40年のキャリアを誇る三上に、役者としての原点、トレンディードラマ時代、今後の展望などについて聞いた。

 高校1年の時、劇作家・寺山修司が脚本・監督を務めたフランスのオムニバス映画の一編「草迷宮」(1979年)で俳優デビュー。友人に誘われたオーデションに参加したが、実は友人も勘違いをしていた。原作は泉鏡花の同名小説だが「友達が『ホラーで、面白そうだぞ』と。オーデションに行ったら、完全な文学作品で、全然分かっていませんでした。寺山修司と言われても“競馬のおっさん”ぐらいのイメージ。映画も『エクソシスト』と『ゴジラ』ぐらいしか知らなかったですからね。この世界に興味?全くなかったので、たまたまなんです」と振り返った。

 小さい頃にあこがれた職業を尋ねると「パイロットとか。普通!」と笑い声を上げ「それは冗談として、シビアに言うと、職種は何でもいいので、とにかく高給取りのサラリーマンになりたかったんです。そのためには内申書だと思っていたので、勉強だけはむちゃくちゃしていました。それで、高校1年になった時、自分の人生は“あと7年”だと思ったんです。高給取りなることだけが目的だから、その後の人生は皆無じゃないですか。だから高校3年、大学4年の7年間で好きなことを全部しようと思って、オーディションも受けてみたんです」と明かした。

 「草迷宮」を撮影した後、いったん学業に戻り「ガリガリ勉強していたんですが、ふと、ここら辺(胸の辺り)が寒々としてきて。この気持ちは何だろうと考えたら、あそこ(芝居の現場)に帰りたいんだと気付いたんです。その頃はフィルムも現像も高く、NGを出して芝居を止めると『止めんな、バカヤロー!』と怒られました。NGを出しても芝居を続ければ、その間違った部分は切って、それ以外の部分は仕えるかもしれないじゃないですか。だから『役者は勝手に止めるな!』と、ものすごく注意されました。当時のローバジェット(低予算)映画だったので、知恵や工夫でどれだけ観客の想像力をカバーできるか、どれだけ作品の力になるかということを、15(歳)で体験したんです」

 そして、寺山主宰のアングラ劇団「天井桟敷」の稽古場に入り浸った。「そんなことじゃ大学に受かるわけがないし、滑り止めは絶対受けなかったので」浪人生活に。2浪した年に母親が亡くなった。遺言は「性格俳優にだけはなっちゃダメよ」だった。

 「母親も以前、売れなかったですが、女優をしていたので、僕のことを見ていて心配したんでしょうね。最初は遺言の意味が分からなかったんですが、母親がきっと伝えたかったのは『アートもいいけれど、多くの人に名前と顔を知ってもらいなさいよ』ということだと解釈して、人生を変えました」。84年、TBS「無邪気な関係」でテレビドラマ初レギュラー。「7番手ぐらいの役でしたが、回が進むに連れて、どんどん出番が増えて。そこから仕事も来るようになって『これでいいんだ』と思いながら作品に向き合っていきました」と思い返した。

 87年、映画「私をスキーに連れてって」(監督馬場康夫)が話題を呼び、88年1月期のフジテレビ“月9”ドラマ「君の瞳をタイホする!」で人気爆発。「トレンディードラマのエース」と呼ばれた。

 「“トレンディー俳優”とカテゴライズされることが多いですが、僕はたまたまその時代にいただけで、いわゆるトレンディードラマにはそんなに出演していないんですよ。『君が嘘をついた』(88年10月期、フジテレビ“月9”、三上の連続ドラマ初主演作)はトレンディードラマだと思いますが、『あなただけ見えない』(92年1月期、フジテレビ“月9”、三重人格役のサスペンス)や『この世の果て』(94年1月期、フジテレビ“月9”、純愛を描く悲劇)はどうなんでしょうね。ただ、トレンディードラマがあったことによって『言えることが増えた』『次に行けた』という部分はあります。『ジキルとハイド』のイメージで『あなただけ見えない』、映画『ベティ・ブルー』が好きで『この世の果て』が生まれたり。パート2も嫌いで『次は違うところに行きたい』、今できるうちに企画はどんどん考えなきゃいけないと思っていたので、すぐにトレンディードラマは卒業できたんです」

 テレビドラマをはじめ、映画「孔雀王」「遠き落日」「スワロウテイル」「パラサイト・イヴ」「月の砂漠」や舞台「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」など数々の話題作に主演。近年はWOWOWドラマへの主演も多い。キャリア40年を迎え、三上博史は今後、どこへ向かうのか。

 「いろいろな理由があって、40(歳)で役者を辞めようと本当に思っていたんですが、そこから戻ってきたという感覚が自分の中にあるので、今の気分は『今、辞めたくないな』と思っています。気分で物を言うなと怒られるかもしれませんが、まず、それが大前提。性別も年齢も関係なく、いい人も悪い人も、世界の隅から隅までの役を演じたい。役は何でも来いと思っていて、あとは使っていただく人次第かな(笑)」

 TBSの飯田和孝プロデューサーは「キャラクター像をすごく計算されていて、演じるということに対して、とても無邪気。初めてサッカーボールを与えてもらった子供みたいな(笑)。今回は『横山』というボール(役)を渡されて『こっちに蹴ったら、こう飛ぶのかな』『どうやって蹴ろうかな』と、いつも考えて楽しんでいらっしゃる」と三上の魅力を表現。「これから、いろいろ制作者がパスする球で、三上さんがどういうふうに“遊ぶ”のか。非常に興味があります」。今年1月公開の「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」(監督宅間孝行)で14年ぶりに映画主演。そして「集団左遷!!」で意外や日曜劇場初出演を果たした。三上の“次の一手”が待ち遠しい。

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