市原隼人 カメラと一心同体 追い求めるレンズ越しの未来 いつかはドキュメンタリーを

[ 2018年10月9日 11:30 ]

デビュー作がきっかけで“撮る側”に興味を持ったという市原隼人
Photo By 提供写真

 俳優の市原隼人(31)とカメラは、まさに一心同体だ。仕事でもプライベートでも常に持ち歩き、一瞬だが永遠となる瞬間を収める。一日に1000枚以上撮ることもあり、写真選びや印刷にまで楽しさを見いだす徹底ぶり。同時に映像撮影にも相当な思い入れがあり、いずれは「ドキュメンタリーを撮ってみたい」と夢を膨らませている。

 元々興味を持ったのは映像だった。2001年に主演デビューの映画「リリイ・シュシュのすべて」で知り合ったカメラマンに影響を受け、18歳でビデオカメラを購入した。

 「家で撮って遊んでいたら、一コマ一コマのカメラワークが難しいと思ったんです。動画は前後の答えが出るけれどスチルは一瞬だから答えがない。動画よりも楽しめるアイテムだと感じた瞬間があって、まずはカメラ、写真の構造を勉強しようと必然的に好きになっていった感覚です」

 それからはさまざまなメーカーのボディーやレンズを試しながら、仕事現場や地方のロケ先でも愛機を入れたリュックを抱え、会心の一枚を求めて無心でシャッターを押す。「これだっ」と思った瞬間には、被写体に一目散にダッシュすることもある。

 「物でも風景でもなんでも撮ります。一つの物でも撮る角度によって全然違う。単純に撮っている瞬間が凄く楽しいけれど、その時の感情と家に帰って落ち着いて見返した時の感情を比べる楽しみもありますし、印刷も何十枚も出して自分が好きな色に近づける楽しみもある。色、コントラスト、光の入り具合など楽しめるところが無限大にあるんです」

 自身のインスタグラムはプロレベルとの評判で、フォロワーは約28万人。「撮りすぎて疲れちゃって」カメラが嫌いになった時期もあったが、今は「毎日でも撮っていたい」と相好を崩す。

 「39度近く熱が出た時も今のこの感情、体調しか撮れない一枚があるってカメラに手が伸びてしまう。芝居の前の緊張感がある時も、今しか感じることができないファインダー越しの世界があるんじゃないかと思ってしまう。もう、どっぷりはまっています」

 カメラ愛を語る言葉の数々は熱を帯びる一方だが、自分自身を見つめ直すことにもつながっているという。

 「自分のことは自分が一番分からないと思うんですよ。周りの人に、あいつはこうだよねと言われて自分を理解していく。カメラもその一部で、市原隼人という人間を知るためのアイテムでもあるんです。主観と俯瞰(ふかん)の両方の目を持って人生を楽しめているので、カメラに感謝しなきゃいけないですね」

 一方で取っ掛かりである映像撮影への意欲も衰え知らずだ。実は、今年1〜3月放送のテレビ朝日「明日の君がもっと好き」ではちゃっかり“カメラマン・デビュー”している。

 「あわよくば1カット撮らせてもらえないかと頼んだら、“ちょっと撮ってみなよ”と許してもらえたんです。アシスタントの方は“俺はまだちゃんと撮ったことがないのに”という目で僕を見ていたので、申し訳ないなと思いながらですけれど」

 とはいっても、喜びを隠し切れず笑顔がはじける様子がほほ笑ましい。実際にカメラをのぞくことによって、俳優として撮られる側の意識にも変化がもたらされた。

 「映画でもドラマでも、こういう意味合いで照明をこちらから当てているのかといったことが分かってくると楽しいですね。自分がどう写っているのかも分かるし、周りの気持ちがくみ取れるので、より寄り添って作品作りができています」

 さらに3人組ガールズダンスユニット「DEVIL NO ID」の新曲「BEAUTIFUL BEAST」のミュージックビデオでは、初めて監督にも挑戦した。そして、その先に見据えるのは映画監督。特にドキュメンタリーへの関心が強い。

 「僕たちがやっていることは虚像。どれだけ一生懸命芝居をして近づけようとしても真実ではない。世の中の人はいろいろな価値観、人生観を持っていて、あらゆる感じ方、在り方があるというウソ偽りのない真実を届けて、見た方が人生をより楽しめるようになってもらえればうれしいですね」

 思い描いているテーマも無限大。もしかしたらいきなり決めて撮り始めることもあるのではないか。「その時は楽しむことすら忘れて、必死になっていると思いますけれど」。その日は、そう遠くない未来に訪れるかもしれない。

 ≪出演映画「あいあい傘」、劇中カメラと愛機が一緒≫市原が出演する映画「あいあい傘」が今月26日に封切られる。25年前に姿を消した父親を捜しに来た娘との再会までの5日間を描く感動作。市原は主演の倉科カナ(30)に思いを寄せる露天商役で、「登場人物全て優しくて、どれだけ時間がたっても好きな人に対する思いは変わらないと改めて感じさせてくれた作品です」と笑顔で語る。倉科はカメラマンという設定で、そのカメラが「自分が使っている機材と一緒だったから、おっ!て思いましたよ」とうれしそうに明かした。

 ◆市原 隼人(いちはら・はやと)1987年(昭62)2月6日生まれ、神奈川県出身の31歳。2001年、映画「リリイ・シュシュのすべて」で主演デビュー。04年「偶然にも最悪な少年」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。08年、ドラマ「ROOKIES」が高視聴率を記録し、翌09年に映画化され大ヒットした。現在、初のミュージカル「生きる」に出演中。

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