にがいゴーヤーが苦手な島人と“ゆいまーる”の島・久米島へ離島留学

[ 2016年9月11日 09:09 ]

「無限ゴーヤー」。沖縄そばの顆粒だしを使う

 【笠原然朗の舌先三寸】沖縄料理の定番食材・ゴーヤー(ニガウリ)。沖縄県久米島在住の親友・平良朝春一家はことあるごとに、ナイチャー(方言で内地人=主に本州在住の人)の友人・メグが作ったゴーヤーチャンプルーが「にが過ぎて食べられなかったさー」と述懐する。下処理しないにがいゴーヤーが苦手なのだ。

 にがいのが好きなナイチャーと苦手な久米島んちゅ…好みの“にがさ”を共有するのは難しい。

 話は飛ぶ。

 次男が4月から県立久米島高校(生徒数234人)に“留学”している。

 久米島は沖縄本島の西約100キロに位置する周囲約50キロの離島。別名「球美(くみ)の島」。ゆるやかな時間が流れる同島の魅力にひかれ、休みのたびに家族で訪れるようになって20年。親しい友人もでき、縁あっての今回の留学となった。

 島が島外から留学生を受け入れるようになったのは離島ならではの事情がある。

 ピーク時には1万7000人を超えていた人口も少子・高齢化が進む中、いまや8126人(16年8月末現在)と半減。島唯一の高校の生徒数も減少の一途をたどった。同校の“看板”園芸科が廃科の危機にさらされるなど、このままでは「島外進学を選ぶ生徒が増える可能性があります。それにともなって一家転住が増え、人口減少が加速し、島の衰退にもつながりかねない、島の将来を左右する問題です」(「久米島高校魅力化プロジェクト」ホームページから)。そんなこんなを背景に14年度から始まったのが島外留学生の受け入れだった。

 今年、沖縄関係予算の一括交付金を利用して寮と町営塾を併設した地域支援交流学習センター「じんぶん館」が完成。次男も現在、同校の園芸科に通いながら寮生活を送っている。

 寮は間仕切り付きの4人部屋。寮費は町からの助成もあって3食付きで1カ月4万2000円。

 夏休みに2週間ほど帰省した折、次男に島の生活を聞いた。

 島のクラスメートたちの優しさが印象的なのだという。「コミュニケーションが苦手な子にはみんなで声をかけたり、弁当を忘れた子には自分の弁当をわけてやったり…。いじめ?そんなものはないさー」。

 「ゆいまーる」(助け合い)の心を大切にする沖縄の美風が島にはあるようだ。

 次男が久米島で生活するようになってなおさら沖縄問題は人ごとではなくなった。

 内閣府は沖縄関係予算を16年当初予算に比べ、予算比で140億円(4・2%)減の3210億円に決定した。他府県にない歴史的、地理的、社会的事情に基づいての沖縄振興策である関係予算だが、今回の予算削減は、参院選での島尻安伊子前沖縄担当相の敗北、そして新基地問題をめぐり政府と対立する翁長県政への意趣返しのようにも思える。

 一方で一括交付金の執行状況について改善点が多くあるという指摘もある。だから予算削減の理由にもされるのだと。

 ナイチャーの次男ら20人の離島留学生たちは、沖縄関係費の恩恵を受けての高校生活である。久米島から、沖縄から何を学ぶのか?そして学んだものをいつ、どこで、どのようなかたちで仕事や生活の中に生かしていくのか?を問われるときが将来、やって来るだろう。ゴーヤーの味がしみるころ、答えは出ているはずだ。それまでちばりよー(沖縄方言で「頑張れ」)。(専門委員)

 <無限ゴーヤーのレシピ>「無限ピーマン」など、「無限」を冠した簡単料理がはやっている。にがさが緩和されておいしいから「無限に食べていられる」のが名前の由来とか。無限ゴーヤーは、調味料に市販の沖縄そばの素を使った。

 (1)ゴーヤーを縦に割って種などを取り除き、薄切り。水にさらす。

 (2)10分ほどさらしたらザルにあけ、塩もみ。3分ほどおいてから塩分をよく洗い流す。

 (3)ボウルにゴーヤー、ツナ缶、沖縄そばの素(塩分がきついから入れすぎには注意)、そばつゆを入れてよく混ぜ合わせる。

 (4)耐熱皿に(3)をあけてラップをかけ、600ワットのレンジで2分間チン。

 ◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩き。

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