杏子 ミュージカル挑戦で達成感 「福耳」は音楽に妥協せず

[ 2016年2月28日 12:00 ]

椅子に座り、クールな表情を見せる杏子

杏子インタビュー(下)

 ハスキーボイスと華麗なダンスで人気の杏子(55)は、カッコイイ大人の女性ミュージシャン。かつてはロックバンド「バービーボーイズ」の紅一点。音楽一筋と思いきや、「本当は2、3年、歌ってチャッチャとお嫁に行こうと思っていたのに」と意外な答えが返って来た。

 ミュージカルとの出合いは、仕事への意識をさらに高めた。90年、東京・日生劇場で上演された宮本亜門氏演出の「マランドロ」だ。初めての経験。出演することが決まり、バービーのメンバーに伝えると、最初は「え~っ」と半ばあきれた顔をされた。杏子自身もミュージカルには「なんで突然歌いだすわけ?」と多少の違和感もあった。ところが、稽古が始まると一転、その世界に一気に引き込まれた。

 「最初、振り付けが全く身に付かなくて困っていると、周囲のアンサンブルの皆さんが私のパートまで覚えてくれて、遅くまで付き合って教えてくれたんです。亜門さんは演出に本当に細かいところまでこだわって、いつも汗だくで走り回っていたし」

 出演者、スタッフが一丸となって作品をゼロから作り上げる。その懸命な共同作業に、あらためてプロの仕事の厳しさと素晴らしさを知った。

 92年、バービーボーイズは惜しまれつつ解散。杏子はソロのミュージシャンとして再スタートする。その後、さまざまな経験で培われた彼女のアーティスト精神が、共通の志を持った仲間を引き寄せたのか。同じ事務所に所属する山崎まさよし、スガシカオらとのスペシャルユニットが生まれた。それが「福耳」。

 「3人で札幌のライブハウスのこけら落としに行ったら、いきなり入り口に“福耳ライブ”と書いてあったんですよ。事務所の社長が“福耳”という言葉をどこかで使いたかったみたいで。でも、そこからどんどんみんなのつながりが強くなっていきましたね。普段はみんな和気あいあいですけど、音楽に対して絶対に妥協はしませんから」

 今では元ちとせ、スキマスイッチ、秦基博らも加わり、まさに一つのファミリーのような感覚。後輩ミュージシャンから慕われる彼女の周辺にはいつも楽しい音楽があふれているようだ。

 ◆杏子(きょうこ)1960年(昭35)8月10日生まれ。長野県出身。都内の女子大を卒業し、商社に勤務しながらバンドで活動。バービーボーイズのツインボーカルとして、84年、「暗闇でDANCE」でメジャーデビュー。「女ぎつねon the Run」「目を閉じておいでよ」などがヒット。解散後はソロで音楽活動。ダンスエクササイズの「バイラ バイラ」でも人気。

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