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拓真、悲願の兄弟王者!尚弥の背中追い続け デビュー13連勝

[ 2018年12月31日 05:30 ]

WBC世界バンタム級暫定王座決定戦12回戦   ○同級5位・井上拓真 判定 同級2位タサーナ・サラパット● ( 2018年12月30日    大田区総合体育館 )

6R、サラパットに強烈な左を見舞う井上拓真(撮影・島崎忠彦)
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 井上兄弟が同時世界王者の夢をかなえた。世界初挑戦の弟・拓真がWBC世界バンタム級暫定王座決定戦に3―0判定勝ち。デビューから13連勝で暫定王者となり、兄のWBA王者・尚弥と同じバンタム級のベルトを獲得した。日本人の兄弟世界王者は亀田3兄弟に次いで2例目。

 リング上で両腕を突き上げた拓真に、父・真吾トレーナーが厳しい表情で駆け寄った。「バンザイなんかしてる内容じゃないぞ」。ジャッジ3人が全員6点差をつける判定勝ちも、井上家が追い求めるレベルは高い。真吾トレーナーは「まだ暫定。(正規王者との)統一戦に勝ったら本当の喜びが出ると思う」と苦笑いした。

 1回、ノーモーションの右で主導権を握ったが、「(70秒KOの)ナオ(尚弥)以上のインパクトを」と力みすぎた。2回にはバッティングでペースを乱され、3回からは前進してきたサラパットに後退させられた。だが、尚弥から「いつも通りの戦い方を」と指示され、勝ちに徹した。相手のパンチを外し、カウンターを狙って細かく、粘り強く当て続けてポイントを獲得。「無事に勝ててホッとした。いい経験になった」。歩んできた道のりと同じく、我慢を重ねての勝利だった。

 ボクシングを始めた時から、偉大な兄を追いかける宿命を背負った。アマでは高校時代に7冠の兄に対し1冠のみ。自身のプロ2戦目のリングで世界王者となった尚弥は今や海外からも注目される存在で、追っても追っても背中は遠ざかるばかりだ。だが、「嫉妬は元々ない。焦ったところでどうしようもできない」と厳しいマッチメークで一段ずつキャリアを積み上げた。2年前に訪れた世界初挑戦の機会は右拳のケガで棒に振ったが、フィジカルや体幹トレでバンタム級に合った体もつくり上げた。「スタミナは圧倒的に自信を持っている。足さばきなど尚弥にないものもある」と大橋会長。尚弥からの技術的アドバイスも受け、兄がかつて巻いたWBCの緑のベルトをつかんだ。

 尚弥は準決勝に進んだワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)で優勝すれば3団体統一王者の可能性があり、拓真も正規王座を獲れば兄弟でのバンタム級4団体王座独占が実現する。「うれしいけど、こんな内容ではナオに並んだとは言えない。並べるようにこれからも精進したい」。兄の背中をいつまでも追い続ける。

 ▽井上拓―サラパットVTR 井上拓は賢く戦い、逃げ切った。1、2回は攻勢を仕掛けてポイントを取った。3回からはフットワークを使って後退しながら有効打を稼いだ。サラパットの出はなや打ち終わりに、左フックや右を的確に合わせた。4回には右のカウンターでぐらつかせた。サラパットは前進を繰り返したが、間合いをつかめず、打撃の威力、的中率とも欠いた。

 ▼サラパット 非常に楽しく試合ができた。井上選手は良い選手で、逃げるのが大変うまかった。

 ▼浜田剛史氏 井上拓はサラパットの強いプレッシャーを受け、ぶつかり合っても体力に劣り、押し負けた。それでも切り替えて自分のボクシングを崩さなかったことが勝利に結びついた。まだ13戦目。課題はあるものの、やりにくい相手に途中、足を使ったり、戦い方をヒットアンドアウェーに切り替えたり、やはり、兄に似たセンスは感じた。

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2018年12月31日のニュース