【大学スポーツ】「立教スポーツ」編集部

立教大学【全日本大学野球決勝】感動をありがとう。熊谷立教、59年ぶりに日本の頂へ

[ 2017年6月12日 05:30 ]

全日本大学野球決勝   立大9-2国際武道大 ( 2017年6月11日    神宮 )

優勝の瞬間、歓喜の輪を作る立大の選手たち(C)「立教スポーツ」編集部
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 大学日本一が決まるこの日。会場となる神宮球場は、全国からその瞬間を一目見ようと、各地の野球ファンが集結した。12,000人の観衆の大きな拍手のもと、両軍の選手がホームベース周辺に集結する。6月11日13時03分。2017年春季の最後に笑っているのは国際武道大か、立大か。決勝戦がプレイボールした。

 春季の集大成となるこの一戦。先発のマウンドに上がったのは手塚(コ2=福島)だった。最速142キロの直球を武器に、初回から魂のこもった投球を披露する。しかし、相手もリーグを制し、全日本の決勝まで勝ち抜いてきた大学である。厳しいコースの変化球に食らいつき、1、3塁から磯網(2年=東海大相模)の右前打で1点を先制された。この大会、先制を許したのは実に3度目。悲願の日本一のため、打線は今季最後の爆発を求められた――。

 1回裏。攻撃途中のそれとない一瞬に、神宮球場がざわついた。バックネット裏の特別に用意された観客席に、あのOBが現れた。長嶋茂雄氏。立教大学野球部の歴史で最もその名前を輝かせた男が突然、観戦に訪れた。自身の現役時代ぶりに駒を進めた全日本選手権の決勝戦。偶然か、必然か。このイニングに、立大打線は見事なつながりを見せる。

 主将・熊谷(コ4=仙台育英)、飯迫(社3=神戸国際大附)の逆方向を意識したチームバッティングがどちらも相手外野陣の前で弾む。長嶋氏の象徴ともいえる「3」を背負った主砲・笠松(コ4=大阪桐蔭)は厳しいコースにバットを出さず四球。満塁のチャンスに、続く打者・山根(営4=浦和学院)の適時打でまずは逆転に成功した。

 「(長嶋氏は)小学生の頃に本で活躍を読んだくらいの選手。同じ学校で野球をすることを夢見て立教大学に進んだ」。

 逆転に成功し、尚も追加点のチャンスとなったこの場面。「ミスター努力の男」大東(社4=長良)が打席に立つ。今大会は全試合で指名打者起用と、自慢の打力を買われた背番号「13」。相手先発・伊藤将(3年=横浜)の初球を、目一杯フルスイングした。打った瞬間にそれとわかる打球がレフトスタンドへ・・・。相手選手は打球を見つめ、ベンチは総出歓喜、観客も総立ちとなる起死回生の本塁打で、スコアボードには貴重な、貴重な「5」が点灯した。この得点が大きかったのか、その後はとってとられの展開ながらも立大優位で進んでいく。9−2。歓喜の瞬間は、着実に近づいていた。

 9回。5回からマウンドに上がっていた中川(コ1=桐光学園)がそのまま最終回のマウンドへ。歴史が変わる瞬間が近づき、ざわつく球場。異様な雰囲気の中、中川は先頭の代打・伊藤優(4年=拓大紅陵)を二ゴロに打ち取る。あと、2人。続く代打・田中(4年=東海大浦安)の打球もセカンドへ。あと、1人。

 捕手の藤野(営2=川越東)、一塁手の飯迫、二塁手の笠井(済2=桐蔭学園)、遊撃手の熊谷、三塁手の笠松。全員が笑顔で中川に声をかける。外野の山根、寺山(社3=神戸国際大附)、高取(コ4=日大二)も、今にも飛び出しそうな構えのベンチ全選手も、スタンドの制服を着た野球部員も。そして球場から、中継の画面から、速報の画面からその一瞬を見届けるすべての大学野球ファンも。すべての視線が中川の右腕に集まる。打者、小田(4年=千葉明徳)の打球は、中川自身のグラブへ。かみしめるように、一塁へ送球する。59年ぶりに、立大が日本の頂点に立った。

 4月15日から始まった、立大野球部の日本一への挑戦。引き分けあり、惨敗あり、大勝あり、サヨナラあり。相手も全力で戦い、そのたびに壁を越えてきた。約2か月に及ぶ長い戦い。本当にあっという間であった。18年ぶりの六大学優勝に、59年ぶりの全日本制覇。これ以上のシーズンはない、最高のシーズンに間違いないだろう。

 立教大学野球部。この2か月間、感動をありがとう。(6月12日「立教スポーツ」編集部・川村健裕)

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