【内田雅也の追球】復調の兆しに挑め

[ 2024年3月18日 08:00 ]

オープン戦   阪神0-4中日 ( 2024年3月17日    バンテリンD )

<中・神> 8回、大山は四球を選ぶ(撮影・大森 寛明)
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 「兆」という漢字は、古代中国で亀の甲羅にできた割れ目で占いを行っていたことに由来する。割れ目が兆しをあらわすという意味である。

 いまの阪神は兆しがほしい。開幕に向け、上り調子になる兆しである。

 長年、野球記者をしているとわかるが、オープン戦での打撃成績は当てにならない。わかってはいるのだが心配になる。

 この日はオープン戦3度目の無得点試合だった。もちろん勝敗は問わないが1勝11敗1分け。13試合で34得点。1試合平均2・6点と3点に満たない得点力が気になる。

 今春はプロ野球全体が投高打低傾向にあり、本塁打数は少ない。阪神の2本(佐藤輝明、ヨハン・ミエセス)は日本ハム、楽天と並んで最少。昨年は17試合で13本塁打したのがウソのようだ。チーム打率2割1分3厘は12球団ワーストである。

 もとより一発を期待する打線ではないが、持ち前のつながりも欠いている。この日は5回表無死一塁で二盗憤死。6回表は無死満塁で凡飛に併殺と拙攻が続いた。得点圏で9打数1安打とあと1本が出なかった。

 打者は復調への手がかりを探っていよう。見る側も復調への兆しはないかと目を凝らす。

 前日欠場した佐藤輝が3安打したのは明るい。

 さらに大山悠輔に兆しが見えた。2打数無安打でオープン戦の打率は2割を切った(1割9分5厘)。それでも第3、第4打席では、しっかりと四球を選んでいる。

 6回表無死二塁では田島慎二から3本のファウルを打ち、難球を見極めた。8回表2死では斎藤綱記の低め変化球に手を出さなかった。いずれも2ストライクと追い込まれてからの四球だった。打ちたいという欲望や強引さを慎むように、ゆったりと一塁に歩いた。この真摯(しんし)な姿勢は復調への兆しだろう。

 昨季、最高出塁率のタイトルを獲得した大山は選んだ四球99個のうち、約半分の49個が2ストライク後だった。走者を還す4番打者だが「自分が――」と強引さが出ては打撃を崩しかねない。自身の好不調の兆しをわかっているのではないか。

 「兆」から派生した字に「逃」や「挑」がある。兆しが見えたならば逃げずに挑んでいきたい。

 監督・岡田彰布は昨季日本一となり「選手個々が役割を心得ている」と信頼を寄せている。連覇に挑む心があれば開幕には復調した打線が仕上がっている。 =敬称略= (編集委員)

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