殿堂入りの古関裕而氏「六甲おろし」「闘魂こめて」「栄冠は君に輝く」生み出した5000曲以上

[ 2023年1月14日 05:25 ]

野球殿堂入り

あいさつする故・古関裕而氏長男の正裕氏
Photo By 代表撮影

 野球殿堂博物館は13日、今年の殿堂入りを発表。特別表彰では「六甲おろし」や「栄冠は君に輝く」などを作曲した故古関裕而氏が選ばれた。

 「六甲おろし」、「闘魂こめて」、「栄冠は君に輝く」など生涯で5000曲以上を生み出した古関裕而氏は89年に80歳で没。通知式に出席した長男・正裕氏(76)は「天国で死ぬほど驚いていると思う。家族にとっても名誉なこと」と喜んだ。

 36年作曲の「六甲おろし」が全国区になったのは約半世紀後の85年。阪神が21年ぶりのリーグ優勝を果たした時だ。甲子園帰りのファンが駅などで大合唱。本人は「どんな曲だったかなあ?」と笑っていたが、正裕氏は「それだけ皆さんに愛された。気持ちを奮い立たせてくれてチームを応援したくなる時に浮かんでくる。心に、記憶に残るメロディー」と感慨深げに話した。

 古関氏の曲作りは楽器は使わず、頭の中で「作るのではなく、生む」。48年に夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」を作曲した際は誰もいない甲子園のマウンドに一人で立ち、選手の姿を思い浮かべ「自然と心の中から湧いてきた」という。

 20年にはNHK連続テレビ小説「エール」のモデルにもなった。「プレーする皆さん、応援する皆さんにエールを送る。そういう気持ちで父は常に曲を作っていた」と正裕氏。この世に残した数々の名曲は、これからも人々に勇気を与え続ける。(鈴木 勝巳)

 ≪地元・福島でも歓喜の声≫古関氏の地元の福島県も喜びに沸いた。JR福島駅前で行われたセレモニーでは関係者や市民が代表作「栄冠は君に輝く」を合唱。曲の最後の一節を「野球殿堂は裕而に輝く」と即興で替え歌にし喜びを共有した。福島市にある古関裕而記念館の村上敏通館長(63)は「古関メロディーを普及しようと思ってやってきた。涙が出そう」と感激。同市の木幡浩市長(62)は「古関さんゆかりの野球の試合を開催したい」と巨人―阪神のOB戦などの実現を見据えた。

 ≪半世紀歌い継がれる「闘魂こめて」≫球団歌である「闘魂こめて」の作曲を手がけた古関裕而さんの殿堂入りを受け、巨人も祝福のコメントを発表した。球団創立30周年を記念し、63年に発表された3代目の球団歌について「半世紀を超えた今も歌い継がれていることは非常に光栄です」と感謝。また「六甲おろし」を球団歌とする阪神も「古関裕而さまの功績に敬意を表し、阪神タイガースはこれからもこの六甲おろしと共に歩んでまいります」とコメントを発表した。

 古関 裕而(こせき・ゆうじ)本名勇治。1909年(明42)8月11日生まれ、福島県出身。30年9月、コロムビアの専属作曲家として上京。以来作曲活動を続け、総作品数は約5000曲を数える。戦後にはNHKラジオドラマ「君の名は」などの主題歌を作曲。スポーツ関係では早大応援歌の「紺碧の空」や「栄冠は君に輝く」、東京五輪の「オリンピック・マーチ」などがある。89年8月18日、80歳で没。20年春には古関氏をモデルにしたNHK連続テレビ小説「エール」が放送された。

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2023年1月14日のニュース