【内田雅也の追球】多様性認める新時代へ バース、ラミレスを突破口に開かれた殿堂を

[ 2023年1月14日 08:00 ]

86年7月4日、13試合連続打点を記録したバース
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 ランディ・バースの殿堂入りがようやくかなった。過去にハワイ生まれの日系2世、若林忠志(日本国籍)や与那嶺要(米国籍)、白系(亡命)ロシア人のヴィクトル・スタルヒン(無国籍)がいたが、いわゆる「外国人選手」では初の殿堂入りである。

 阪神を日本一に導いた1985(昭和60)年、86年と2年連続三冠王、86年の3割8分9厘はプロ野球最高打率だ。在籍6年で通算打率3割3分7厘、202本塁打は十分な成績と言える。

 それでも現役引退後5年で対象となるプレーヤー表彰では票が伸びず2004年に資格喪失。エキスパート表彰で復活候補となった2013年にはわずか26%の得票率だった。その後は年々得票数を伸ばし、昨年は71%で次点だった。

 昨年まで長年、殿堂幹事を務めてきた立場で、バースの殿堂入りがかなわないのはなぜかと自問自答してきた。実働期間が短いとの声はある。88年途中、重病を患った長男に付き添って戦列を離れ退団。実働5年余りだった。短期間、出稼ぎにやってきた異人との偏見から敬意を欠いていたのではないだろうか。

 「史上最強の助っ人」と呼ばれた。この「助っ人」という扱いにバースは疎外感を抱き「なぜガイジンのバースなんだ。どうしてタイガースのバースと呼んでくれないんだ」と心の叫びを口にしていた。将棋を指し、出前で卵うどんと天ぷらを好み、選手同士の集会で大いに発言していた。チーム、日本に溶け込もうと懸命だった。

 島国日本の閉鎖性だろうか。一方でアメリカ野球殿堂ではイチローが有資格初年度での当選が有力視される。カナダ野球殿堂では2003年、戦前に活躍した日系人チーム・バンクーバー朝日が殿堂入りした。差別と偏見に屈せず、立ち向かった姿が移民社会と野球文化への功績として認められた。日本も国籍や人種などにとらわれない、開かれた殿堂でありたい。

 グローバル化が進み、多様性を認める時代である。今回はプレーヤー表彰でアレックス・ラミレスも殿堂に入った。歴史的な外国人アベック当選を突破口として、レロン・リー、ブーマー・ウェルズ……ら外国人選手の再評価が進むことを望んでいる。 =敬称略=
 (編集委員)

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2023年1月14日のニュース