西武・松坂大輔が人知れず泣いた藤川球児の引退スピーチ 松坂の「恩返し」の言葉の意味

[ 2020年12月22日 20:35 ]

2009年の第2回WBCで2連覇を果たし、シャンパンファイトで大はしゃぎする藤川球児投手と松坂大輔投手
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 西武が松坂大輔投手(40)と来季も契約を結んだと発表した。

 14年ぶりに古巣復帰した今季は5月に右手にしびれを訴え、7月には首の痛みと右手のしびれ対策で頸椎(けいつい)手術も受け、1、2軍ともに登板なしに終わった。シーズン終了後に1度だけ、松坂と話す機会があった。

 話題は11月10日の阪神・藤川球児の引退セレモニーだった。清原和博氏や、ダルビッシュ(カブス)、和田毅(ソフトバンク)らがねぎらいのメッセージを送る中、松坂の言葉は流れることはなかった。

 「僕の方から辞退を申し入れました。本人にも申し訳ないと」。それ以上の理由を聞くことはしなかった。自身は首の手術からのリハビリの日々。一方、球児は引退試合といえど、マウンドに立った。その引退セレモニーの舞台に、映像とはいえ、登場することはふさわしくないと思ったのだと推察する。

 ただ、次の言葉に力がこもっていた。「セレモニーはテレビで見ました。涙が出ました」。

 藤川は引退スピーチで「ライバル松坂大輔へ。必ず投げる姿を見せて、世の中の人を元気にして下さい! あなたのそういう姿が今の日本には必要です。僕があなたの一番の応援団になります。目標でいてくれてありがとう」と言った。その言葉にどれだけ背中を押されたか。どれだけ勇気を与えてくれたかは想像に難くはない。シーズンを終え、来季の契約について、球団と話し合いが始まる前だっただろう。

 松坂は球団を通じ「契約していただき感謝しています。来季はメットライフドームでの勝利を目標にサポートしていただいている球団、応援してくれているファンの方々に少しでも恩返しができるようにやっていきたい」とコメントした。「恩返し」の言葉に、球児の思いが重なる。

 40歳シーズンの大手術を経て、1軍のマウンドに立つことすら、厳しい道のりである。だが、7月の手術から、1日たりともリハビリを怠ったことはないと聞く。球団、ファン、そして球児の思いを背負って日米通算23年目のシーズンに向かう。(倉橋 憲史)
 

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2020年12月22日のニュース