気がつけば40年(9)1983年日本シリーズ 江川は開幕前から右太股を肉離れしていた
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【永瀬郷太郎のGOOD LUCK!】西武と巨人が初めて相まみえた1983年の日本シリーズ。西武球場で迎えた第1戦は西武が田淵幸一の3ランなどで江川卓を攻略し、6―3で先勝した。
第2戦は一転、西本聖が西武の強力打線をわずか4安打に封じ、巨人が4―0で快勝。1勝1敗の五分に戻した。西本は公式戦最終登板となった10月21日の大洋戦(後楽園)では、わずか2回8安打7失点でKOされていた。9月以降6試合に登板して27失点。西武は全くノーマークだった。
先行逃げ切りで決着したのはここまで。後楽園球場に所を移した第3戦から壮絶な逆転の応酬が始まる。
西武が2回、石毛宏典の中前適時打で1点を先制すれば、巨人は4回に駒田徳広の右前適時打と槙原寛己への押し出し四球で2点を奪い、逆転。すると西武は6回、テリー・ウィットフィールドの右越え3ランで再逆転。これでも終わらなかった。
巨人は4回途中からロングリリーフに立った東尾修から8回、ヘクター・クルーズが左越えソロを放って1点差とすると、9回2死無走者から篠塚利夫(のちに和典)が中前、原辰徳が左前、レジー・スミスは右前へ3連打を浴びせて同点。西武がたまらず森繁和を投入すると、中畑清が駒大の1年後輩から左前に弾き返してサヨナラ勝ちを収めた。
第4戦は巨人が初回原の左越え2ラン、2回山倉の左翼席へのソロと2本のホームランで3点を先行したが、第1戦2回6失点の江川が守り切れない。3回、スティーブ・オンティベロスの右前適時打で1点、5回には2死二、三塁から田淵に左中間へタイムリーを許して3―3の同点になった。
江川に勝利への執念はあった。6回の攻撃だ。2死から8番の鈴木康友が三ゴロ失で出塁すると、松沼雅之の投球を捉えて右中間を真っ二つに破った。鈴木康友が勝ち越しのホームイン。しかし、二塁まで行けたはずの江川は一塁まで走るのがやっとだった。
右太股裏を肉離れしていたのである。
当時はこの試合初回の投球中に痛めたとされていたが、実は違った。シリーズ開幕前、多摩川での練習中に痛めていたのだ。大一番に向けた調整練習のメニューとしてはいかがかと思える100メートル10本のインターバル走。前年から思わしくない右肩の状態に耐えながら公式戦217回3分の2の投球を支えてきた軸足が悲鳴を上げたのである。
エースの故障を敵陣に知られるわけにはいかない。かん口令が敷かれ、江川は予定通り第1戦に先発。わずか2回でKOされたが、肉体的には何の問題もないとアピールするために、第3戦前の移動日に後楽園のブルペンで何と197球の投球練習を行った。
そんな努力も空しく肉離れが白日の下にさらされた。勝ち越しタイムリーを放って自ら勝利投手の権利をもぎとった江川は、代走の中井康之と交代してベンチに下がった。しかし、大きな代償を払いながら勝利投手にはなれなかった。
3番手の加藤初が8回、立花義家に逆転の右越え2ランを浴び、さらに田淵、大田卓司の長短打でもう1点奪われた。9回には定岡正二が山崎裕之にダメ押しの左越えソロを許し、4―7で敗れた。
2勝2敗で迎えた第5戦は第2戦で完封した西本が先発した。2回2死満塁のピンチをしのいで3回まで無失点。日本ハムとの後楽園決戦となった1981年から続けてきた日本シリーズの通算連続無失点イニングを29回まで伸ばした。26回で並んでいた稲尾和久を抜くシリーズ新記録だ。
この記録をストップさせたのが田淵だった。4回の先頭打者。内角シュートを見事に捉えて左翼ポールを直撃した。第2戦で苦しめられたシュートをどう打つか。同じシュートを武器にする東尾に「シュートを投げにくいのはどんなバッター?」と聞いて、ベースに近く、一番捕手寄りに立った。
それだけじゃない。バットにも細工した。34・5インチのスラッガータイプのバットを目一杯長く持ち、左手の小指をグリップエンドにかけて打つスタイル。しかし、西本のシュートはバットを短く持たないとさばけない。かといって短く持ったら小指をかけるところがない。そこでグリップエンドの上にテープをグルグル巻いて3センチほどの土手をつくり、そこに小指をかけて打ったのだ。
西本はこの一発がショックだったのか、続く大田、テリーに連打を許し、無死一、二塁から山崎の投ゴロを二塁へ悪送球してしまった。2点目。さらに伊東勤を歩かせ、無死満塁とした。だが、ここで踏ん張るのが雑草エース。このピンチをしのぎ、試合は2点差のまま終盤を迎えた。
巨人は7回、3番手の東尾をつかまえ、原の左越えソロとクルーズの三塁線を破る適時打で同点。9回にはクルーズが森から左翼席へ3ランを放った。第3戦に続くサヨナラ勝ち。巨人が圧倒的に有利と思われたが、まだまだ大きなドラマが待ち構えていた。(特別編集委員)
◆永瀬 郷太郎(ながせ・ごうたろう)1955年9月生まれの64歳。岡山市出身。80年スポーツニッポン新聞東京本社入社。82年から野球担当記者を続けている。還暦イヤーから学生時代の仲間とバンドをやっているが、今年はコロナ禍でライブの予定が立っていない。
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