楽天・涌井 ノーノーあと2人も…1安打完封&開幕6連勝「西口さんと一緒で、9回に打たれるだろうな」

[ 2020年8月6日 05:30 ]

パ・リーグ   楽天6―0ソフトバンク ( 2020年8月5日    楽天生命 )

<楽・ソ>ソフトバンク打線を封じる楽天・涌井(撮影・白鳥 佳樹)
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 あと2人――。楽天・涌井秀章投手(34)が5日、ソフトバンク戦で1安打完封し、自己最長の開幕6連勝。9回1死まで無安打無得点に抑える快投を演じた。球団史上初のノーヒッターこそ逃したが、防御率2・33と合わせて2部門でリーグトップ。昨季ロッテで3勝に終わった男が杜の都で復活し、チームを2連勝で首位タイに再浮上させた。

 9回1死まで無安打無失点。「狙ってはいましたけど」。涌井は代打・川島に投じた内角への144キロの直球でバットをへし折った。しかし、打球は自らの頭上を越えて中前に落ちた。「こんなもんでしょ。バットも折れて、押し込めた」。あっけらかんと振り返った。

 どんな時でもポーカーフェースを崩さない右腕。マウンドに内野手が集まると初めて、少しだけ口元を緩めた。ただ、即座にギアを入れ直した。続く今宮は空振り三振。最後の打者となった柳田への5球目でこの日の最速149キロを計測した。「まだまだいけるというアピール。150キロ出したかったんだけど」。最後の132球目は冷静にスライダーで空振り三振を奪った。

 過去3度の最多勝に輝き、09年には投手として最高の名誉でもある沢村賞も受賞した。球界を代表する右腕だが、昨季まで所属したロッテでは17年から1桁勝利が続いた。昨季はわずか3勝。ロッテの若返りの球団方針もあり、新天地を求めた。「まだ伸びしろはあると思うし、できることもある」。復活を期して金銭トレードで今季から「杜の都」に活躍の場を移し「キャリアハイを目指す」と抱負を語った。16年目でも貪欲に進化を追い求めている。小山投手コーチから教わった新球の「シンカー」は開幕6連勝を支える新たな武器になっている。

 変わらないものもある。「先発完投」へのこだわりだ。「松坂さんへの憧れがあって。こういうふうになりたいというのがスタートだった」。34歳になった今でも、いつまでもマウンドに立ち続ける横浜高の偉大な先輩の背中を追い続けている。現代の野球は投手の分業が確立されている。「昭和」や「平成」の時代に評価されたスタイルは時代遅れかもしれないが、涌井にとっては「美徳」。現役での完投数59は、松坂の72に次ぐ2位だ。

 試合後には無安打無得点について「一回はやってみたいと思いますけど、(あと1人から2度打たれた)西口さんと一緒で、9回に打たれるだろうなとは思います」と冗談めかした。チームを2連勝に導き、ソフトバンクと同率首位に浮上したことが何よりもうれしかった。それでも欲はある。「記録はおまけみたいなもの。でも、またチャンスがあると思う。いずれノーヒットノーランや完全試合も見えてくる」。いつの日か、最高の「おまけ」を手にする。(重光 晋太郎)

 ≪楽天の1安打完封は3人目≫涌井(楽)が1安打完封勝利。楽天投手のノーヒットノーランはなく、1安打完封は09年8月5日オリックス戦で藤原、14年8月15日ロッテ戦、18年5月12日オリックス戦で則本がマークしたのに次ぎ3人目(4度目)になる。また、涌井は西武時代の10年5月7日ソフトバンク戦でも9回無死から唯一の安打を許し完封勝利。9回以降の1安打のみで完封勝利を2度は83年8月20日、84年5月29日近鉄戦で仁科(ロ)がいずれも9回2死から安打されて以来36年ぶり2人目。2球団で記録したのは涌井が初めてだ。

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